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私はバブル絶頂期に銀行へ入りました。新入行員の受け入れ準備をする支店では私の趣味特技がどんでもない形で誤解されていたこと。新人らしく毎朝に全部のデスクを雑巾がけして回っていた私の身に起きた想定外の出来事とは!?

富士銀行(みずほの前身)市ヶ谷支店の10周年記念誌

富士銀行市ヶ谷支店10周年誌

 

上の写真は、私が1989年(平成元年)に入行した富士銀行市ヶ谷支店の、オープン10周年の記念文集です。焼けやしみが全くなく、30年近く前のものとは思えないような状態です。バブル時代は印刷物のペーパーも良質なものを使っているのでしょうか?

 

 

上の写真は私のコメントページ。前途洋々な明るい未来を信じて疑わない、バブリーな世相をよく表しています。

 

「マリンバダンスって何??」

バブル銀行・新人の仕事~カードノルマの洗礼で触れたとおり、私は上智大学体育会競技ダンス部の出身でした。会社に提出したプロフィールの”特技またはスポーツ”欄にもその旨を書きました。

 

配属される新人が確定した市ヶ谷支店では、各自のプロフィールを書いた模造紙を食堂に張り出していました。私のプロフィール紹介の「特技」欄には、なぜか「マリンバ  ダンス」と書かれていたため、店内が一時騒然となったそうです。

 

マリンバダンスっていったい何だろー?

「裸で腰に布切れを巻いて踊るやつじゃない?」

「いや、それはファイヤーダンスでしょ!」

「もしかして、棒の下をくぐるやつ?」

「それはリンボーダンスでしょー!」

 

・・違います。

 

マリンバというのは、乱暴に言えば、木琴の大きなやつです。

 

マリンバ


これです。実は、私は幼稚園から高校生まで12年間、マリンバを習っていました。マレット(ばち)を4本使って演奏できるレベルです。マリンバを知らない人が、プロフィールを見て「ダンス」につなげてしまったのでした。

 

市ヶ谷支店での初日に早速、興味津々な女子の先輩たちに囲まれました。年次は1年古いものの短大卒のため歳は私より若い「かしまし三人娘」

 

「ねえねえ奥野さん、マリンバダンスって何?」
「どーゆーやつ?踊って踊って!!」

 

数年前に荻野目洋子のダンシング・ヒーローがヒットし、当時は「ディスコ」マハラジャの全盛期。(扇子を振り回しながらお立ち台でワンレン・ボディコンギャルが踊り狂う、ジュリアナ東京が誕生したのはこの2年後です。)いったい彼女たちはどんなダンスを想像していたのでしょうか・・

 

「いや。あれはマリンバとダンスの間違いです。競技ダンスをやっていました。」

 

私がそう答えると、かしまし三人娘は明らかに失望した表情を見せました。

 

「何それ?競技ダンスって…」

 

「ワルツとかタンゴとかルンバとか、社交ダンスを競技化したやつですよ。スポーツダンスと呼ばれることもあります。」

 

「ふーん。今どきそんなのやる人いるんだ。」

 

どうもピンと来ないようでした。今なら、スマホを取り出し写真や動画を見せれば、即時に理解してもらえるでしょう。簡単なコミュニケーションにも工夫を要する、そんな時代でした

 

ある日、三人娘のうちの一人が嬉しそうに報告してきました。

 

「奥野さーん。昨日ね、東大の男子たちと合コンしたのよ。そしたら一人が『競技ダンスをやっている』って言うから、『へー、私の会社にもいるよ!』って奥野さんの名前を出したの。そしたらその男子、奥野さんのこと知ってるって!びっくりー!ほんとに踊ってたのねー。」

 

そんな感じで、スタートから私には『普通じゃない男子』のレッテルが貼られました。しかし冒頭の文集の決意表明のとおり、やたら燃えている新人であるのもまた事実でした。

 

朝は真っ先に出社してテンキー機の練習に励み、他の人が出社する前に全員のデスクを雑巾で拭いて回りました。『新入社員の心得』みたいな本を読み漁り、それが新人としての作法と信じて疑わなかったのです。

 

「私たちの仕事だから、しないでくれる?」

当時の銀行では、女性行員が雑巾がけとお茶出しを行っていました。私が毎朝デスクを拭いて回っていることを知った三人娘が私を呼び出しました。三人は少しムスッとした顔をしています。

 

「奥野さんさー、机を拭くのは私たちの仕事だから、しないでくれる?」

「えっ!?」

 

てっきり感謝の言葉があるのかと思えば、怒られてしまうとは!?しかし三人娘に逆らうのは課長に逆らうよりも恐ろしいことなので、私は素直に従いました。

 

(『新人の男子に机を拭かせてる!』とお局様に怒られてしまうのかな・・?)

 

当時はその程度にしか思いませんでした。

 

しかしごく最近、ネットで目にした書き込みで、自分の浅はかさを思い知りました。

 

独り善がりだろ。

『海外の空港ラウンジで、食器類を自分で片付ける日本人は白い目で見られている。ラウンジスタッフの仕事を奪う行為であり、絶対にやってはいけないことだ。』という趣旨の内容でした。

 

私は海外の空港ラウンジをよく利用しますが、しょっちゅう自分で片付けてました・・確かにスタッフさんはあまりいい顔をしてなかったような気がします。

30年近く前の出来事を思い出しました。

 

(「三人娘が嫌々雑巾がけをしている」と誰が言った?彼女たちは、自分たちの業務の一つとして、プライドを持って机を拭いていたのかもしれないじゃないか?)

 

勝手に、代わりに行う雑巾がけは、自分の「独り善がり」に過ぎなかったのでは!?

 

50歳を過ぎてようやく気がつきました。
人生まだまだ勉強です・・

 

 

30年前の記憶を辿っています。このため各エピソードの時期、前後関係や発言内容が事実と異なっている場合がございます。結果として一部フィクションが含まれることをご理解ご認識ください。

 

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