台湾の南の都市「高雄」にある地下鉄駅の「美麗島駅(びれいとう/びれいじま えき)」はステンドグラスの “Dome of Light”(光のドーム)で人気です。検索すると「世界で2番目に美しい駅」という表題や説明文も目につきます。しかし情報ソースを追ってみると、その情報は正確でないことが分かります。短いタイトルには省略も多いことに注意すべきです。(文中敬称略)
ステンドグラスで有名な美麗島駅(台湾・高雄)
台湾の南の都市「高雄」にある「美麗島駅」(英:Formosa Boulevard Station、日本語では「びれいじま」と「びれいとう」両方の呼び名が混在している)は、インスタ映えスポットとして人気です。
地下のドーム天井一面にステンドグラスが光り輝き、多くの人々が記念写真を撮影しています。
地上出口(地上から見たら入口?)の建造物も凝った造りとなっており、角度によって様々な形に見えます。エスカレータ出入口(建造物からしたら裏側?)はこんな感じ。
横から見た形。写真の右奥に正面から見た形が確認できます。
ガラス張りの地上出口は夕方からライトアップされます。
この洒落たメイン出口の建物が交差点の四隅にあるのです。
美麗島駅の地上出口の設計は日本の建築家「高松伸」
夕方からライトアップされる美麗島駅の地上出口の洒落たデザインの設計は、日本の建築家「高松伸(たかまつ しん)」によるものです。
高松伸といえば、京阪宇治線の桃山南口駅(京都)の脇にある奇抜なヤバい建物『仁科歯科医院 ARK』で有名です。
仁科歯科医院 ARK と美麗島駅の造形はかなり異質な印象を受けます。Wikipediaの解説によると、1990年頃から高松伸の設計手法が大きく変わったとのこと。2008年に完成した美麗島駅は高松伸の「後期」の作品に当たるのです。
彼の作風は1990年頃に大きく変わる。
前期:1980年代 – 1990年頃。時代はポストモダンと呼ばれるデザインが主流となるが、バブル景気と重なり、何でもありの風潮となり、ポストモダンはほとんど定義不可能となった。彼もそうしたポストモダンの建築家の一人と、世間的には認識された。
完全な左右対称・硬質で要素過多の造形・機械的な形態・オモチャがそのまま大きくなったようなスケール感の撹乱。こうした形態要素を非日常的に組み立てることによって住宅や中小規模の商業建築を作り、その特殊な形態は市民の耳目を集めた。
後期:1990年頃以降。受注する建物の規模が大きくなるにつれ、彼の設計手法は大きく変わった。
前期の手法はすべて葬り去られ、代わりに大きなガラスの箱・時には内部化された外部・特殊なサッシ割りなどがそれに変わる。
この変化は、スケールの拡大に対する賢明で柔軟な対応であるという評価もあるが、前期に存在した独特の魅力が失われてしまったという声もある。
高松伸ーWikipedia より引用
正確ではない「世界で2番目に美しい駅」という情報
ところで「美麗島駅」で検索すると「世界で2番目に美しい駅」という記述が数多く出てきます。しかし、この表現は正確ではありません。
アメリカの旅行会社 BootsnAll Travel が発表したランキングは”15 of the Most Beautiful Subway Stops in the World”つまり「世界で2番目に美しい”地下鉄”駅」なのです。ちなみに、このランキングのリリースは2011年11月です。
15 of the Most Beautiful Subway Stops in the World http://t.co/yTPVZ45I #travel
— BootsnAll Travel (@BootsnAll) 2011年11月18日
「世界で最も美しい駅14選」が別に存在する
BootsnAll Travelの「美しい地下鉄駅の世界ランキング」発表とほぼ同じ時期に、Travel + Leisureが”World’s Most Beautiful Train Stations”を発表しています。
順位をつけずに14の駅を紹介しており、日本の金沢駅も紹介されています。しかしながら、美麗島駅は取り上げられていません。
ブログや記事によっては、本文の中では「地下鉄」と記載しつつもタイトルでは「地下鉄」を省いているケースも多見されます。
タイトルには、文字数に制約があって省略せざるを得ない情報がある・・・ということを認識して、表題だけ読んで分かったつもりになるのは注意が必要です。