銀行の営業店で行われる店内ゴルフコンペでは「馬券」と呼ばれる”賭け”が恒例行事となっていました。店内スタッフの多くから掛け金を募り、当選金を現金で配当するこの行為は「賭博罪」。実際に一般企業では書類送検された事例も。(文中敬称略)
銀行員の「危ない?」ゴルフ事情
何かとゴルフ好きが多い印象の銀行員。趣味、スポーツ、投資、ビジネス案件・・・目的は様々です。
しかし銀行とゴルフは、もう切っても切れない関係であるのは間違いありません。
銀行の営業店では年2回の恒例「店内ゴルフコンペ」に半強制参加
私がいた銀行の営業店では、年に2回『店内ゴルフコンペ』が行われていました。
ちなみに、新入行員には「参加か不参加か?」といった個人の選択肢はありません。暗黙の強制参加です。
私は学生時代にゴルフなどやったこともありません。ルールもよく知りません。でもそんな事情は関係ありません。
銀行に入った年、私はゴルフコンペの1週間前に慌ててゴルフセットを購入。
そして1度だけ「打ちっ放し練習場」でボールを打って、いきなりコースデビューしました。
もうムチャクチャです。。ヽ(´o`;
ゴルフ天国の地方支店の週末は「早朝ゴルフ」!?
「ゴルフ天国」とも言える新潟に赴任中は、週末にたびたび支店長に連れられて「早朝ゴルフ」へ行きました。
新潟は、市街地から車で30分も走らない距離にゴルフ場がいくつもあります。少し早起きすれば夜が明ける前にゴルフ場に到着できるのです。
そして日の出とともにスタートしてノンストップで18ホール回ります。キャディもいません。
18ホールを回り終えてシャワーも浴びずに帰宅すると、まだ午前中の早い頃なのです。
早朝ゴルフだと土日もかなり有効に使えます。プレーフィーも安いし、とても良い仕組みです。
高騰してバブルが弾けたゴルフ会員権
下のリンク先の「椿ゴルフ」ウェブサイトの下段に「ゴルフ会員権の過去30年の相場推移」のグラフがあります。
バブル絶頂期に向けて上昇を続けて→崩壊するパターンは、株価や不動産価格の動きとほとんど同じです。
ちなみに日経平均株価とゴルフ会員権価格の最高値は次のタイミングでした。
- 日経平均株価 最高値 1989年12月
- ゴルフ会員権* 最高値 1990年 2月 (*指定150銘柄の平均)
ゴルフ会員権の斡旋をする!? 銀行員
上記のとおりゴルフ会員権の相場価格は急降下して再び値が戻ることはありませんでした。
さらに経営難に陥って破綻するゴルフ場も続出!!
単純な投資目的で会員権を購入した人たちの多くは、相当に深刻なダメージを受けました。
それでも本当にゴルフが好きな人にとっては、安くなったゴルフ会員権は狙い所!?
バブルが弾けた後も某支店では、お取引先にゴルフ会員権の斡旋のような行為をしていた副支店長もいました。
お取引先から次のような苦情を言われたこともあります。
「おたくの副支店長、会社に来てもゴルフ会員権の話しかしないから、何とかしてよ・・」
オーマイガーヽ(´o`;
ゴルフ接待は減った!?
ゴルフと聞けば「接待」というイメージも強いです。
確かにバブル時から崩壊後に至るまで、支店長は月に数回(平日含む)は接待ゴルフに出かけていました。
日本の金融システム危機が本格化した二十世紀の終盤以降には、さすがに自粛されて回数も減りました。
ゴルフコンペ毎に行われる危ない「馬券」イベント
さて、それでは本題に。
銀行の営業店で恒例行事となっていた年2回の店内ゴルフコンペでは、”全店行事”として「馬券」というイベントが行われていました。
コンペを競馬、プレーヤーを馬に見立てて、1位・2位を予想するゲームです。
ゴルフコンペ「賭博」を盛り上げるために趣向を凝らす幹事
ゴルフコンペの「馬券」をどう盛り上げるかは、コンペの幹事の腕の見せ所です。
単勝式では単純だからと連勝複式にしてみたり、各自のプロフィールとオッズで競馬新聞風のペーパーを作って配ったり・・・
ゴルフ場へ行かない営業店の行員の大多数にも「どう馬券に参加させるか?」の工夫を要求されるのです。
掛け金は高いときには一口●●●●円。大穴当てて数万円稼ぐ人もいました。
ゴルフコンペの「馬券」は賭博罪。どの営業店でも行われていた
当時は誰も声を上げませんでした。
しかしこれは『賭博』です。
アウトです!
賭博罪は50万円以下の罰金又は科料に処せられる罪です(刑法185条)。
賭博罪の公訴時効は3年なので、ぶちまけます。
どの営業店へ異動しても必ず「馬券」イベントが行われていました。
「おカネ」に関しては尋常じゃないほど厳しい銀行が、なぜかこの「馬券」だけは黙認していました。
振り返ると奇妙に思います。
そして「そういう時代だから」で通ってしまうほど、世の中の「コンプライアンス」に対する意識が変化したなと実感します。
ゴルフコンペの馬券で書類送検されたNECの事例もある
2006年、この馬券イベントによる賭博容疑によってNECの社員61人が書類送検されました。
この頃のネットの書き込みには「どこでもやっているのに可哀想」という同情が多くありました。
程度の差はあるにせよ、似たようなイベントは各所で行われていたことを物語っています。
NEC(東京都港区)文教ソリューション事業部内のゴルフコンペで現金を賭けていたとされる問題で、警視庁保安課は7日、賭博容疑で同事業部の部長(54)ら社員43人と関連会社数社の社員18人の計61人を書類送検した。
ゴルフコンペは部内の親睦(しんぼく)を深めるレクリエーションとして数年前から、「事業部長杯」などの冠を付けて年数回、開催。
プレーヤーを数組に分け、優勝、準優勝の組を予想する「馬券」を1口200円で売り、賭けゴルフを行っていた。
コンペに参加しない社員や関連会社の社員にも社内メールなどで申し込みを呼びかけていた。
事業部長は「軽い気持ちで遊び感覚だった。今になって大変なことをやってしまった」と話しているという。
調べでは、事業部長らは昨年10、11、12月、茨城県内などのゴルフ場で開催された3回のゴルフコンペで、延べ約40人のプレーヤーを1~4人1組に分け、優勝、準優勝の組を予想する「馬券」(1口200円)を計537口(計10万7400円)申し込ませ、現金を賭けていた疑い。
的中者には2,000~3,000円の配当金が渡されていた。
NECは「真摯(しんし)に反省しするとともに社員のモラルの向上に努めていきたい」と話している。
産経新聞 2006年11月7日 より引用
コンプライアンスが厳しく言われるようになった今ではもう、さすがに馬券イベントはやっていないはずです。
代わりにどうやって社内ゴルフコンペを盛り上げているのかは興味があります・・・