喫煙や破廉恥(ハレンチ)が普通だった昭和の時代。今なら「ハラスメント」で訴えられそうなヤバい話もあります。バイト先の居酒屋では、とんでもない「セクハラ」メニューが登場して、私はお客様へ提供することに・・・(文中敬称略)
アルバイト先の居酒屋に登場した珍メニュー!?
大学1年の夏休み、初めてアルバイトをしたのが池袋の居酒屋「D」でした。前回の 食い逃げは無罪!? で書いたお店です。
私が働いた「D」は、池袋東口のサンシャイン通りの入口にあるカフェ「ミルキーウエイ」と交差点の対角にある雑居ビルの地下にありました。
コテコテの居酒屋ではなく、女性同士でも気軽に入店できるような雰囲気の居酒屋でした。
ある夜のこと、店が閉まると板さん(厨房のスタッフ)にホールスタッフが集められました。
「明日から新メニューを提供します!」
私たちは目の前に出されたお皿を見て思わず「おぉぉー!?」と声をあげてしまいました。
それは「ソーセージ」がメインの料理でした。
ソーセージとウィンナーの違いとは!?
ちなみに、ソーセージとウィンナーの違いってご存知ですか?
私も、この記事を書きだして改めて
「あれ? ソーセージとウィンナーのどちらが正解なのだろうー?」
と分からなくなり調べてみて、ようやく納得しました。
ウィンナーはソーセージ種類の1つ(太さで分類)
ソーセージとウィンナーの違いを簡単に図にすると、こういうことですね。
▼ソーセージとウィンナーの関係図
「ソーセージ」の中の種類として「ウインナー」等がある。
元来は天然ケーシング(=Casing:ソーセージを包む薄い膜)の種類によって分けられていました。
人工ケーシング(コラーゲン等)が一般的になった日本のJAS規格(日本農林規格)では、ソーセージの太さで「ウィンナー」等に分類されています。
▼ソーセージの分類表
ウィンナー ソーセージ |
羊腸を使用したもの又は製品の太さが20㎜未満のもの(牛腸を使用したもの及び豚腸を使用したものを除く) |
フランクフルト ソーセージ |
豚腸を使用したもの又は製品の太さが20㎜以上36㎜未満のもの(牛腸を使用したもの及び羊腸を使用したものを除く) |
ボロニア ソーセージ |
牛腸を使用したもの又は製品の太さが36mm以上のもの(豚腸を使用したもの及び羊腸を使用したものを除く) |
農林水産省 ー JAS規格一覧(番号32)ソーセージ による分類
居酒屋「珍メニュー」の全貌
話を戻して、居酒屋「D」で私たちホールスタッフがどよめきの声をあげた珍メニューの料理とは・・・
1 | 太くて長さ12~3cm程度のソーセージをベーコンで巻いてあります。一般的なベーコン巻きは素材を中央で巻くはずですが、ソーセージの先端の2、3cmだけ露出しています |
2 | レタスを敷いたお皿の中心から少しずれた位置に、ソーセージのベーコン巻きを置きます |
3 | 半分にカットしたゆで卵を、ソーセージベーコン巻きの(先端が露出していない)根元に、ソーセージを挟むようにして置きます |
4 | ソーセージの根元と卵の一部を覆うようにキャベツの千切りを置きます |
5 | 卵とキャベツの反対側のソーセージの先端部分に、白いフレンチドレッシングを流します |
この説明で伝わってますか?
料理のイメージが浮かんできますでしょうか?
そう、相当にアンビリバボーなディッシュです。ヽ(´o`;
図解してみました。
▼居酒屋珍メニュー!?
珍メニュー、名付けて「マスターベーコン」!?
「な、何すか、これ?」
「名付けて、マスターベーコンだ!」
「まじっすかぁーー?」
初めは板さんの冗談かと思いました。しかし、どうやら本気のようです。
すでにポスターまで作ってありました。
店長はそのポスター(料理の写真は無い)を得意げに私たちに見せてくれたのです。
珍メニュー「マスターベーコン」の発売開始日に・・・
衝撃の新メニューが発表された次の日、居酒屋の店内の壁にマスターベーコンのポスターが貼られました。
昨晩の話はジョークではなかったのです。
困惑の朝礼「マスターベーコンを積極的におすすめせよ!」
私たちホールスタッフの困惑をよそに朝礼(時間は夕方)が始まりました。店長が檄を飛ばします。
「それでは準備は整いましたので、新メニューのマスターベーコンを積極的におすすめしてくださいね!」
「・・・はい! (正気か・・・)」
まじめな学生アルバイトだった私は、出された指示に従わざるを得ません。
全てのお客様に対して新メニューの「マスターベーコン」をおすすめしました。
女性客から珍メニューの注文が入った!?
私が、しばらく接客を続けていると、あろうことか若い女性の二人組が新メニューのポスターに気がつきました。
「このマスターベーコンってどういうものですか?」
「ソーセージのベーコン巻きに卵と野菜を合わせたものです。 面白いメニューですよ!」
「じゃあ、それひとつお願いします!」
お客様の様子を見ていると、彼女たちはこの珍メニューの名称の怪しい響きには気がついていないようです。
私は一抹の不安を抱きながら、厨房カウンターへ注文を告げに行きました。
「マスターベーコン注文入りました!」
「おう! でかした!」
「女性の二人組ですよ・・・ 大丈夫ですかね?」
「平気だよー!」
最初の注文が女性客ということを、板さんは全く気にする様子もありません。
マスターベーコンを出したところ・・・
そして、私は「マスターベーコン」を女性二人のテーブルへ運んでいきました。
「お待たせいたしました。マスターベーコンでございます・・・」
「・・・!!」
お皿の料理を見た瞬間、二人の女性の表情が凍りついたのが分かりました。
しかし二人は無言です。
「あれっ? キャーとかイヤーとか、反応なし?」
私はそっとテーブルから離れて少し歩いてから、振り返ってみました。
無言で席を立ってしまったお客様ー!?
ふと振り返ってみた私が見た光景とは、硬い表情のまま席を立つ、二人の女性のお客様の姿でした。
なんと二人は終始無言のまま、料理に全く手を付けず、そそくさと勘定を済ませて店を出ていってしまったのです!
私は「新メニュー注文第1号のお客様の状況」を店長へ報告しました。
「店長、マスターベーコンを見た女性のお客様が、料理に手を付けず、食事の途中でお帰りになってしまいました・・・」
「まじか・・・」
店長も少し想定外の反応だったようでショックを受けていました。
消えたセクハラ”珍”メニュー
そして新メニューの発売開始から数日も立たずに、マスターベーコンのメニューは廃止となり、ポスターも撤去されました。
バブル時代の入り口で「セクハラ(=セクシャルハラスメント)」という言葉がまだ日本では認識されていなかった頃の話です。
平成の今の時代にこんなメニューを提供したら「セクハラ」で訴えられてしまうでしょう・・・