オンデーズの再生に取り組んだ初期(2008年)に不可解な事件がありました。メガネ業界に殴り込むや否や、雑貨チェーンを買収するなど、ますます勢いづいて”目障りな”田中修治を陥れようとする黒い罠なのか!? 実録レポートです。(文中敬称略)
資産家が支援してくれる!?
2008年11月の OWNDAYS ・・・この年の7月末に要請した”銀行の返済リスケジュール”は依然として未決着のまま。
買収した雑貨事業も激しく足を引っ張り、地獄の血の池に既に下半身が沈んでいた頃です。
(雑貨事業とは別の、夏に流れた)M&A の案件で接触していた金融ブローカーO氏から連絡が入りました。
「支援者を紹介できる」という話です。
アメリカで成功した伊集院氏!?
そして2008年11月21日の夜でした。
田中修治と奥野は虎ノ門にある(老舗高級ホテル)ホテルオークラのレストランへ呼び出されたのです。
O氏と一緒に現れたのは”アメリカン●●”というリサーチ会社のA社長。
「アメリカで財を成した資産家が支援を申し出ています」
とA社長は切り出しました。
「伊集院●さんという方です」
A社長の説明によると、”伊集院●”氏とはこんな人・・・
- アーカンソー州で事業を成功させた
- クリントン元大統領とも親交がある
- 日本に戻り投資家として悠々自適
- 趣味で老眼鏡の専業メーカーを立ち上げた
3,000万円ならすぐに融資できる!?
そしてA社長は、耳を疑うような話を続けます。
「若くしてメガネ業界に参入した田中社長を応援したいと言っている。で、いくら必要なのか?」
「このままだと月末に3,000万円ショートします」
「3,000万円ですね。その程度であれば、すぐにでも融資の準備ができるようです。来週ご本人を紹介しましょう」
調査してみると何だか怪しい
狐につままれるような話ですが、事実であれば救われる・・・
土日明けに”伊集院”氏が関わるとされる会社や自宅の謄本を取得して調べてみました。
A社長が言っていた(老眼鏡を扱う)●●●という会社は確かに存在しました。
資産家が農協から住宅ローン!?
登記されている伊集院氏の住居表示の不動産登記を確認すると、北陸の田舎にある2階建100平米程度の中古住宅です。
地元の農協が2,000万円の抵当権を付けています。少し不思議です。
「資産家が2,000万円・2.6%のローンなんか組んで家を買うかな!?」
”投資家としての顔”は見えた
ただし「投資家としての顔」は、EDINET(電子開示システム)で確認ができました。
ある上場企業の主要株主に名前を連ねていたのです。
「信じて良いのか分からない…」
しかし、自然体では月末に3,000万円不足します。あと3日しか残されていない。
さあどうするかー!?
謎めいた伊集院氏と会った
正直なところ伊集院氏を疑う気持ちの方が勝っていました。
しかし一方で、どんな人物なのかという興味もありました。
田中修治と奥野は、指定されたホテルオークラに向かいました。
2008年11月27日・・・(29日・30日が土・日曜のため)実質的な月末日の前日でした。
上場企業の社長をやらないか!?
2人の前に現れた伊集院氏は、細身で初老の紳士。品の良いスーツに身をまとっていました。
先週の夜のホテルオークラとは雰囲気が違う、ランチタイムのテーブル。カレーライスを食べながらの会話となります。
伊集院氏がおもむろに切り出しました。
「実は・・・田中さんに●●●の社長を引き受けてもらえないかなと思っているのですよ」
●●●は、事前の私の調査で伊集院氏の関与を知った上場企業です。
さすがにオファーは受けられない
「上場会社の社長をやってくれ」という、突然のリクエストを田中修治は固辞しました。
当然ですね。 オンデーズ の再生に取り組んでまだ1年も経っていません。
そんな依頼をしてくる方がどうかしています。
伊集院氏は残念そうなため息をつくと「それでは資金の件だけど、明日3,000万円で良いのだね?」と本題に入りました。
「明日の朝イチで振り込むよ」
差し当たって支援する分については、事前にA社長を通して条件を詰めていました。
借入金額は3,000万円、期間は1ヶ月です。
契約書のドラフトを渡す
奥野は準備してきた金銭消費貸借契約証書のドラフトを出しました。
「はい。3,000万円、期間1ヶ月で契約書を作りました」
「入金が確認できたら押印した現物をお送りします」
さすがに怪しい人物に押印済みの契約書なんか渡せません。
それでNGと言われればそれまでの話です。
すると伊集院氏は、手にとった借入契約書のドラフトに目を通すと、ニッコリ笑って言いました。
「分かりました。 明日の朝イチで振込します」
どうなる? 月末の支払
ホテルオークラからの帰り道。田中と奥野は不思議なランチタイムを振り返っていました。
「どう思います?」
「当てにしない方が良いですね」
「そうだよね。月末は大丈夫?」
「先送りする支払はピックアップしました。何とかなりそうです」
この11月末は銀行休業日でした。
この場合、オンデーズ の店舗の大半が入居するイオン系のショッピングモールは、日々”吸い上げた”売上金をまとめて、翌1日に振込してきます。
実に”資金コントローラー泣かせ”の決まりごとでした。
そこで支払期限が”月末指定”の大きな支払いについて「前営業日→翌営業日」に先送りして、資金不足を何とか凌ぐということです。
目障りな奴は消してしまえ!?
伊集院氏と会った翌日の11月28日。結局、3,000万円は振込されませんでした。
夕方に田中から奥野へ電話が入りました。
「振込あった?」
「入金はありません」
「やっぱりねー。何だろーねー」
「いったい何をしたかったのか・・・」
田中が伊集院氏に電話をかけても一切、応答はありませんでした。もう奇々怪々。
やはりペテン師だった
ずっと後に、この伊集院氏と思われる人物が「詐欺等」の容疑で逮捕されて実刑判決を受けたニュースを見ました。
彼がペテン師だったことは、もはや疑いはありません。
きっと目的は オンデーズ の資金繰りを破綻させることだったのでしょう。
しかし誰が差し向けた刺客だったのか? 想像を巡らすと業界の闇が見えてきそうです。
(その1)破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 【裏話】伊集院事件