セブンイレブンのCMでよく耳にする曲『デイ・ドリーム・ビリーバー』を歌っているのは忌野清志郎ですが、リリースしたのは ”ザ・タイマーズ” という覆面バンドでした。その背景には「反原子力発電」ソングを巡る企業とメディアへの猛烈な抗議の意味合いがありました。(文中敬称略)
セブンイレブンのCMソングで有名な『デイ・ドリーム・ビリーバー』
2011年から、コンビニ最大手「セブンイレブン」のCMに使用され続けている曲は、忌野清志郎が歌う『デイ・ドリーム・ビリーバー』。
この『デイ・ドリーム・ビリーバー』のオリジナルは、1960年代の後半に大人気だったアメリカのポップ・ロックバンド “モンキーズ/The Monkees” の『Daydream Believer』です。
カバー曲のクレジットは『ザ・タイマーズ』←忌野清志郎ではない
日本語の歌い手は忌野清志郎。ロックバンド ”RCサクセション” を率いて圧倒的な存在感を放った日本のザ・キング・オブ・ロックです。
しかし、このカバー曲『デイ・ドリーム・ビリーバー』のリリースは、忌野清志郎でもRCサクセションでもなく、一風変わったバンドです。
演奏者は『ザ・タイマーズ/The Timers』という覆面バンド、日本語の作詞者は ”ZERRY” となっていました。
”ZERRY”こと忌野清志郎の『ザ・タイマーズ』
ザ・タイマーズは、1988年夏に忌野清志郎が中心となって結成されました。メンバーは次の4名。
メンバー変名 | 担当 | 実名 | 所属バンド |
ZERRY (ゼリー) | リードボーカル、ギター、ハーモニカ | 忌野清志郎 | RCサクセション |
TOPPI (トッピ) | ギター、バックボーカル | 三宅伸治 | MOJO CLUB |
BOBBY (ボビー) | ウッドベース | 川上剛 | ヒルビリー・バップス |
PAH (パー) | ドラムス | 杉山章二丸 | MOJO CLUB |
TOPPIは忌野の個人運転手係やRCの裏方を長く経験していた人物で、次に召集されたBOBBYとPAHはトッピのバンド仲間。(『ROCK JET VOL.68』P31より)
1988年の8月、原子力発電問題をテーマにしたシングル曲『ラヴ・ミー・テンダー』とアルバム『COVERS』について、東芝EMIが発売を中止しました。(後にキティ・レコードから発売された)
忌野清志郎は抗議活動としてゲリラ・ライブを計画するものの、RCサクセションのメンバーの賛同を得られなかったため『ザ・タイマーズ』を結成したのでした。
設定は”土木作業の現場作業員”かつ”ザ・タイガース”のパロディバンド
ザ・タイマーズは全員が「土木作業の現場作業員」という設定で、ヘルメットと現場作業員の服装を身に着けていました。
またかつて ”モンキーズ” のカバー曲を演奏していた「ザ・タイガース」(グループサウンズの人気グループ)のパロディバンドという設定もあり、メンバーの変名はザ・タイガースのメンバーの愛称(ジュリー、トッポ、サリー、ピー)をもじったものでした。
ザ・タイマーズは1988年8月3日、富士急ハイランドのイベントでアン・ルイスのライブに乱入しライヴ・デビュー。
「広島平和コンサート」や大学の学園祭ライブに多数出演するなど積極的な活動を続けます。そして翌年の1989年10月にファースト・シングル『デイ・ドリーム・ビリーバー』をリリースしてメジャーデビューします。
しかし、もともと期間限定のバンドであったため、1989年をもって活動は終了しました。(その後1994年~1995年と2005年に一時的に復活している)
