数年に一度くらいしか成田空港を利用しない人は不思議に思っているかもしれません。電車を降りて改札を抜けた先にセキュリティーチェックを行うゲートがあります。以前はパスポートの提示が必要だったその検閲所では、今では係の人が立っていて「こんにちはー」と挨拶するだけです。いつから身分証明書チェックが廃止となったのか? なぜ無くなったのか? まとめてみました。(文中敬称略)
成田空港のセキュリティーチェック廃止の時期は2015年3月30日
成田空港に鉄道や自動車で入る際に必要だったセキュリティーチェック(身分証明書チェック)※は、2015年3月30日にすべて廃止となりました。
※出国前の保安検査場での手荷物検査やイミグレーション(出入国審査カウンター)の審査とは別の話です。
国内で唯一セキュリティーチェックがあった理由
日本国内の空港で、入港時に身分証明書の提示が必要だったのは成田空港だけです。なぜ成田空港だけセキュリティーチェックを必要としていたのか?
詳細の理解は別としても、成田空港建設時の反対運動で過激派と激しい闘争があり、かつ長期化したことはご存知だと思います。
「成田闘争」や「三里塚闘争(さんりづかとうそう)」三里塚闘争ーWikipedia と呼ばれた反対運動は、1995年に和解するまで30年近く続いていたのです。
そのため成田空港側は、過激派によるゲリラ攻撃を警戒してセキュリティ-チェックを行っていたわけです。
「成田空港 空と大地の歴史館」で闘争の歴史を知る
三里塚闘争の歴史を知るのに適した歴史館「成田空港 空と大地の歴史館」が成田空港の近隣にあります。 電車と車でのアクセス
成田空港問題の歴史を、後世に伝える常設展示施設として、2011年(平成23年)6月23日に開館した。
成田空港地域共生委員会(現・成田空港地域共生・共栄会議)の歴史伝承部会の事業を成田国際空港株式会社が継承し、「建設側と反対側の双方の観点から、バランスの良い展示に配慮する」というテーマで、開館の準備を進めた。
常設展示では、新東京国際空港建設前に当地で営まれていた農業や戦後開拓の歴史、1960年代から1970年代における日本の流行、成田空港反対闘争の様子、管制塔占拠事件、政府側と熱田派の間で話し合いが行われたシンポジウムや円卓会議、成田国際空港の現在と将来に係る資料を展示している。
では、反対運動の歴史はどこで語られているのかと言えば、本館から少し離れた「空と大地の歴史館」。こちらもこちらで、当時の反対派が使用していた垂幕や、資料も豊富でよく出来てるんだけど、明らかに異質で、パイロットにあこがれる息子を連れたファミリー向きではないかな。でも興味深いよ。 pic.twitter.com/4sWSj4wvcA
— 吉川 祐介 (@yuwave2009) 2018年7月6日
「空と大地の歴史館」は「航空科学博物館」の敷地内東側にあることから、上のツイートでは「航空科学博物館」を「本館」と表現しています。
セキュリティーチェックが無くなった背景
それでは、2015年3月のセキュリティーチェック廃止が実現した背景についてまとめてみましょう。
ノンストップ化←利便性・快適性の向上
1995年の空港建設反対派との和解によって厳戒警備の必要がなくなった成田空港側は、入場ゲートのスムーズな通行や、車両ゲートの交通渋滞の緩和によって、空港利用者の利便性と快適性の向上を目指したのでした。
システム導入
今回の検問廃止に先立ち、2013年から空港各所に顔認識カメラの設置や、車両の入場記録管理のシステムの導入を進めていたことがわかるニュース記事があります。
NAAによると、駅や旅客ターミナル内の約70カ所に、人の顔を識別する機能が付いたカメラ約150台を13年度末までに設置。爆発物探知犬の導入も検討する。道路にもカメラを設置し、車両の入場記録を管理するシステムを14年秋までに整備するとしている。
日本経済新聞 2013/9/26 より引用
第3ターミナルから国内線LCCの就航
2015年4月8日から、LCC(低コスト航空会社)用の「成田空港第3旅客ターミナル」がオープンしました。
LCC国内線を利用する旅行者はパスポートを持っていない可能性が高いです。
そのためターミナル入場時の混乱を避ける目的で、パスポートチェックを廃止したと考えられます。
第3ターミナルが出来る以前にも、成田空港発の国内線フライトはありました。しかし大半の利用客は国際線の乗り継ぎです。
パスポート不所持の旅客者は混乱を懸念するほどの人数はいなかったのでしょう。
導入された新しい技術、システムの概要
実際に成田空港にどのようなシステムが導入されたのか、個別に見ていきましょう。
PTB入場管理カメラシステム~人物や車両を監視する
人物や車両を監視する「PTB入場管理カメラシステム」は、パナソニックシステムネットワークスが約3億円で工事落札した記録を確認できます。
ちなみに、2017年10月から羽田空港に導入された、帰国時の「顔認証ゲート」システムもPanasonic製です。
爆発物検知装置(ETD)
「ふき取り式爆発物検査装置(ETD=Explosives Trace Detection System)」は手荷物に残ったごく微量の爆発物を検出できるシステムです。
このETDの実証実験は、2005年から行われていた記録があります。
バッグの取っ手などを特殊な繊維でふき取り、それを ETD に入れる→火薬類の有無がわかる仕組みです。
L3 Security & Detection Systems
爆発物探知犬
確かに、時々空港内で犬を連れて歩いている係員を見かけます。麻薬探知犬かと思っていたら爆発物探知を行う犬もいるのですね。