「サランラップ」の”Saran”の由来は「ダウケミカル社の職員2名の奥さんの名前の合成」という(旭化成のウェブサイトの)説明が日本では通説になり、ネット上に氾濫しています。しかしアメリカでの通説は違っています。(文中敬称略)

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クレラップとサランラップの商品名の由来は何か?

食品用ラップフィルムの日本市場の圧倒的シェアを占める2大ブランドの「クレラップ」と「サランラップ」。

クレハ(旧:呉羽化学工業)の製品=クレラップは分かりやすいです。

しかしサランラップ誕生時のメーカーは「ダウ・ケミカル(The Dow Chemical Co.)」です。

メーカーのホームページの歴史説明では「ダウケミカル社の2名の職員の奥さんの名前を合わせたもの」とあり、ネット上でもその説明で溢れかえっています。

しかし(情報源を辿らないと気が済まない)私がアメリカの情報を調べたところ、日本での通説と異なっていることに気がつきました。

 

日本でのサランラップのメーカー「旭化成」の説明

現在の販売元である旭化成ホームプロダクツ(株)のウェブサイトに「サランラップの歴史」が書かれています。

1940年代後半

ある日、フィルム製造メーカーの職長を務めていたラドウィック、アイアンズの二人は、妻を伴って近所の人々とピクニックに出かけました。

ラドウィックの奥さんは、たまたま夫が会社で作っていたフィルムにレタスを包んで持っていきました。すると「このラップとてもきれい。どこで手に入れたの?」「私も欲しい。どこで売っているの?」と大変な評判になってしまいました。

そこでラドウィック、アイアンズの二人は驚き、早速翌日上司に報告し、クリング・ラップ・カンパニーを設立して開発に着手し、ダウケミカル社から取り寄せた樹脂のロールを紙管に巻き付けて箱詰めし、サランラップ第1号が完成したという訳です。

完成すると近郊の都市でも試験的に販売され、結果は上々でした。名前もラドウィック、アイアンズの二人の妻サラ(Sarah)とアン(Ann)にちなんで「サランラップ」と決定されました。

旭化成ホームプロダクツ(株)ウェブサイト より引用

 

整理すると、下の【表1】になります。2名の職員の奥さんの名前を合わせたのが「サラン」。

「Sarah + Ann =Saran」

【 表1 】
職員名 奥さんの名前
ラドウィック サラ(Sarah)
アイアンズ アン(Ann)
 

サランラップ – Wikipedia にも上記と同じ内容が書かれています。

 

アメリカでの通説は「日本で信じられている通説」と違っている

一方、英語版の Saran (plastic) ーWikipedia には違う説明が書かれています。

In 1943, John Reilly (Ralph Wiley’s boss) and Ralph Wiley of The Dow Chemical Co. completed the final work needed for introduction of PVDC, which had been invented in 1939.PVDC monofilaments were also extruded for the first time.

The word “Saran” was coined by a combination of John Reilly’s wife’s and daughter’s names, Sarah and Ann Reilly.

Saran (plastic) ーWikipedia より引用

整理したのが下の【表2】です。

「Sarah」は奥さん「Ann」は娘の名前とのこと。

さらに職員2名の名前も全く違っています

【 表2 】
職員名 奥さんの名前 + 娘の名前
John Reilly サラ(Sarah) + アン(Ann)
Ralph Wiley
 

アメリカの通説を追いかけてみた

英語版Wikipediaに書いてある事実を確認するために更に調べてみました。

1994年の新聞記事に「Ralph Wiley」の実在を確認できる

Ludington Daily News – Mar 5, 1994 の記事
→ Dow’s plastic wrap celebrates 40th birthday

「Saran」の開発者としてダウケミカルの職員だった「Ralph Wiley」氏にインタビューした記事を載せています。Wileyの上司は「Jack Reily」であると書いています。

 

Joey Green(ベストセラー作家)の豆知識サイトに解説がある

アメリカのベストセラー作家 Joey Green の豆知識サイトに Saran Wrap の記事 Joey Green’s “Weird Facts about Saran Wrap” があります。

ここでも「Jack Relly が彼の奥さんと娘の名前を合体させた」と書かれています。

Saran, the trademark name for vinylidene chloride polymer, was coined by Dow chemist Jack Reilly, who combined the names of his wife and daughter, Sarah and Ann Reilly.

Joey Green’s “Weird Facts about Saran Wrap” より引用

 

アメリカのメーカーのウェブサイトには記載がない

現在「Saran」を販売しているのは S.C. Johnson & Son, Inc. で、「Saran」のページも存在します。

 

しかし「Saran」の歴史や名称の由来についての記載は確認できませんでした。

日本の「旭化成」の異なる説明・・・「妻+娘」を「妻+妻」と勘違いしたという程度なら理解できますが、開発者の名前が全く違うとなると不思議です。

もう少しリサーチしたうえで「旭化成」に問い合わせしてみようと思います。

もしどなたか真相をご存知の方がいれば教えてくださーい!(゚∀゚)