天台宗の総本山「比叡山延暦寺」は、僧侶が厳しい「仏道修行」を行う場としても有名です。しかし実は、一般人を対象とした研修道場『居士林(こじりん)』もあり、座禅等の修行を体験することが出来ます。私がお取引先の社内研修にお付き合いして参加した”非日常体験”を書きましょう。(文中敬称略)
比叡山延暦寺がある場所は京都か滋賀か?
「よし! 座禅を体験をしに行ってみよう!」と思い立っても、場所を知らなくてはプランも立てられません。
まずは「比叡山延暦寺」の位置をきちんと認識しておきましょう。
住所は滋賀県大津市となっているが・・・
比叡山延暦寺の所在地を検索すると「滋賀県大津市」となっています。
しかしながら、有名なCMキャンペーンの『そうだ 京都、行こう。』では、京都の名所としてしばしば比叡山延暦寺が取り上げられています。
延暦寺とは比叡山に点在するお堂の総称
実は「延暦寺」というのは、京都府と滋賀県にまたがる「比叡山」に点在する約100ある堂宇(どうう=お堂)の総称です。
延暦寺は大きく3つのエリアに区分され「三塔」と呼ばれています。
- 東側:東塔(とうどう)
- 西側:西塔(さいとう)
- 北側:横川(よかわ)
三塔それぞれに本堂があります。
▼比叡山延暦寺「三塔」の位置
比叡山延暦寺ウェブサイトより引用
「延暦寺」とは、比叡山の山内にある1700ヘクタールの境内地に点在する約100ほどの堂宇の総称です。
延暦寺という一塔の建造物があるわけではありません。
山内を地域別に、東を「東塔(とうどう)」、西を「西塔(さいとう)」、北を「横川(よかわ)」の三つに区分しています。これを三塔と言い、それぞれに本堂があります。
比叡山延暦寺ウェブサイト より引用
比叡山延暦寺の研修道場『居士林(こじりん)』
延暦寺の西塔には「居士林(こじりん)」という研修道場があります。一般の人が「修行体験」を受けることができます。
あふれるモノや情報の中でつねに忙しく、不安を抱きながら暮らしている私たち。
時にはそんな日常を離れ、自分自身に向き合うことも必要ではないでしょうか。
静寂な延暦寺西塔にある居士林(こじりん)は、比叡山の中でも唯一広く一般の人々に開放された修行道場です。日帰りから1泊・2泊の本格的な修行体験までしていただけます。
仏道修行(体験コース / 研修コース)
修行体験は西塔(さいとう)にある『居士林』という研修道場で行われます。
コースは2つ。
- 体験コース(座禅・写経)
- 研修コース(座禅・写経・食事・法話)
研修コースは、「日帰り・1泊2日・2泊3日」の各メニューがあります。
銀行の取引先のお付き合いで1泊2日の研修コースに参加した
1994年、阪神淡路大震災が起きる前の年です。私は大阪の富士銀行北浜支店に勤務していました。
北浜支店の取引先の1社が毎年(社員研修の一環として)社員数名を「比叡山延暦寺の修行体験」に送り込んでいました。
すると銀行側も毎年(接待の一環として)行員数名をその修行体験へ一緒に参加させていたのです。
私が参加したのは1泊2日の研修コースでした。銀行側からは課長、私、若手後輩の3人で参加しました。
全体の研修参加者は数十名。一般的な研修の様子は延暦寺のウェブサイトの写真で確認できます。
【2019/7/25 追記】
比叡山延暦寺の居士林研修道場はクローズ中です。
2018年(平成30年)9月の台風21号によって「施設に甚大な被害が発生した」とのこと。
▼比叡山延暦寺ウェブサイトのお知らせ表示
居士林研修道場は、台風21号(平成30年9月)の影響により、施設に甚大な被害が発生したため、現在、研修会、修行体験を実施することができません。
比叡山での研修会、修行体験をご希望の際は、宿坊「延暦寺会館」をご利用下さいますよう、お願い申し上げます。
施設の再開につきましては、改めましてHP上にてお知らせ致します。
長年当施設をご利用頂きました皆様をはじめ、多くの皆様に大変ご不便ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。
問合せ先
宿坊「延暦寺会館」(TEL:077-579-4180 / FAX:077-579-5053)
仏道修行「1泊2日研修コース」参加レポート
それでは私が参加した研修の様子をレポートしてみましょう。
参考に2019年7月25日現在ウェブサイトの案内に掲載されている1泊2日研修コースのスケジュールは次のとおりです。
◆1日目◆ 先 14:30までに居士林に到着のこと |
◆2日目◆ |
座禅
まずは座禅から始まりました。
古いお堂の板の間。薄い座布団の上に足を組み、ひたすら瞑想します。
全員が何度か棒で叩かれます。
この棒は「警策(きょうさく、けいさく)」と呼びます。
悲鳴を上げるほどではありませんが、それなりに痛いです。
叩き方や回数は宗派によって異なるとのこと。延暦寺の場合は正面から、両肩それぞれ3回ずつ叩かれます。
リズミカルに「パン、パン、パーン」という感じです。
叩かれた後は両手を合わせてお辞儀をします。
座禅の瞑想に入る前に、「足の組み方」や「無心になる方法」は簡単に説明してもらえます。よって座禅経験なしでも問題ありません。
食事
食事はいわゆる「精進料理」というのでしょうか・・・ものすごい薄味。
食事も修行の一つとして捉えられているため、ルールが厳しいです。
音を立てるのは厳禁!!
私語はもちろんのこと、器や箸の上げ下げや食べる時の音を全く排除することが求められます。
たくあんも音を立てずに食べろと言われます。
食事中はさすがに警策で叩かれることはありません。しかし音をたてると僧侶の怒号が飛んできます。
写経
たぶん、この写経が一番キツかったかもしれません。
板の間にペラペラ座布団。これに正座をしながら1時間、ひたすらお経を書き写します。
ご想像のとおり、足が痺れて、とんでもないことになります。
風呂~就寝
風呂は時間制限あり(記憶では5分間だけ)で、狭い風呂場に数名が押し込まれます。もうカラスの行水状態です。
風呂場の中には僧侶が入ってこないので、一緒に参加した不謹慎な後輩はボヤいていました。
「何でこんな目にあわなきゃいけないのか? あのくそ坊主がー!」
風呂からあがると、早い時間に就寝です。
1部屋に6名のせんべい布団が折り曲げて並べられ、全員が布団の前に正座します。
そして理由もなく、全員が警策で叩かれます。
起床~ランニング
翌朝は日の出前に起床です。
そして全員で境内の周りの道路をランニングします。若い僧侶が先導して走っていきます。
すると前の晩に愚痴を言っていた若い後輩は、
「くそ坊主の鼻を明かしてやります」
と私に囁く(ささやく)と、先頭を走る僧侶を一気に抜き去りました。
気がついた僧侶もスピードアップします。
そしてお互いにデッドヒートしながら、二人はどんどんと先へ行ってしまいました。
ゴールである境内に着くと、後輩は勝ち誇った笑みを浮かべ「やりましたよ! 勝ちました!」と得意げでした。
近くで息を切らしている僧侶の悔しそうな顔と言ったら・・・ヽ(´o`;
2日目も座禅
2日目はランニングの後も、食事や座禅へと続きました。
僧侶を走り負かせた彼がどういう目にあったか、私は知りません。
座禅で瞑想に耽れば、他人の様子など気にも留めなくなりますから・・・(゚∀゚)