貸し渋り・貸しはがし「銀行員は冷酷非情?」融資回収の裏側

投稿日:2018年3月 8日(木) 更新日:

ひび割れた顔

photoAC

メガバンクの冷酷無慈悲の手法と実際。最前線にいた私が書きます。
バブル崩壊~"失われた20年"の半ばで社会問題化した、銀行による過酷な融資の貸し渋りや貸しはがし。実際に何が行われていたのか? ごく一部の事例ですが、「貸しはがし」にフォーカスしてその手法と実際の状況を、わかりやすく説明しましょう。
私は当時、富士銀行(みずほ銀行の前身)で融資課長として債権管理回収の最前線にいました。

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中小企業いじめ・・・貸しはがしの手法

  1. 期日更新をストップ
  2. 極度取引の解消

「貸し渋り」は「新規の融資をしない」ことなのでわかりやすいです。「貸しはがし」のもっとも一般的なパターンとしてはこの2つがあります。

 

貸しはがしの手法1:期日更新をストップ

通常の融資の返済方法は「元金均等返済」(=毎月または3ヶ月毎に元金の返済を行っていって期日には残高がゼロとなる)が一般的です。

しかし運転資金の返済方法には「期日一括返済」(=分割返済をしない)もあります。

手形融資の場合は、通常6ヶ月や1年毎に「手形書換」を行って何年も元金を減らすことなく継続されていきます。

この期日一括返済条件の融資を「次の期日には継続しない」と通告します

 

貸しはがしの手法2:極度取引の解消

一定金額(極度金額)の融資枠を決めて、その範囲内で繰り返し借入することができる形があります。

多くの場合は「手形融資」や「借入専用当座貸越」の融資の形をとります。

この枠の契約期間は通常1~2年で、自動的に契約更新となります。

「貸しはがし」は、契約満了の時点またはそれ以前に交渉して、極度を破棄するのです。

極度を破棄した後は、その時点の残高に約定返済をつけていくか、一括での返済を求めます。

極度取引だからといって安心してはいけません。

 

メイン寄せ・・・地方銀行にしわ寄せするメガバンク

メガバンクの貸しはがしのスタンスが顕著に現れたのは、地方都市における「メイン寄せ」でしょう。

メガバンクと地方金融機関を分けて考える

21世紀に入ってすぐの当時には「メガバンク」という言葉は存在しておらず(または一般的ではなく)、大手の銀行は「大手都市銀行」と呼ばれていました。ただし便宜上ここでは「メガバンク」という言葉を使います。

メガバンクは主に東京に本部を構え、地方に支店網を張り巡らせていました。

一方、「地方金融機関」は、地方都市を中心に周辺の数県のみを営業エリアとしている金融機関。

地方銀行、第二地銀等の種類はありますものの、ここでは便宜的に「地方銀行」と呼びます。

 

メガバンクの地方支店の暗黙のルール「いざとなったら地元の銀行に任せて逃げろ」

メガバンクの地方都市にある支店の融資スタンスは露骨でした。

「メイン銀行になる必要はない。いざとなったら逃げられるようにしておけ」

当然ながらそう明文化されたものはありません。ただしそういう会話は実際に存在していました。

「何かあったら逃げる」スタンスだったことから、地方における「貸しはがし」はエグいものでした。

私たちは『メイン寄せ』と呼んでいました。文字通り『不良債権をその取引先のメイン行である地方銀行に寄せる』ということです。

 

私が行った「メイン寄せ」の実例

5千万円の手形借入を1年毎に書き換えることを数年続けている中小企業のお取引先がありました。

元金の返済がない、金融用語で『コロガシ単名手形』といわれる形式の融資です。

これを「貸しはがし」しようという銀行の判断になりました(担当個人のみの判断で融資を謝絶することは不可でした)。

たいへん辛い場面ですが、社長に向かって伝えます。

「再来月末に期日が到来する手形5千万円は、残念ながら継続ができません。ご返済いただきます」

「な、なんだ突然!どういうことだ!?」

寝耳に水の社長は、当然気色ばんで叫びます。私は淡々と会社の財務上や収益性の問題を説明します。あらかじめ周到に準備した内容を理路整然と説明するため、社長は反論できません。

「返せたって! 資金なんかないよ! どうすりゃいいんだ?」

「何とかしてくださるようお願いします」

「何言ってんだ! 我々に潰れろと言っているのか!?」

「メイン銀行は●●銀行さんでしたね? ●●銀行さんへご相談されたらいかがですか?」

これが『メイン寄せ』です!!

社長は銀行の貸し渋りや貸しはがしの話を耳にはしていたはずです。しかしまさか自分の身に降りかかるとは思ってもいなかったでしょう。

実際に「こんな先も貸しはがすのか!?」というケースも多々ありました。

全て「破綻懸念先」という十字架を背負わされた結果です

 

目の前の銀行担当者をどつきたくなる

オンデーズで逆の立場になってよくわかりましたが、銀行にこういうことをされると、目の前の担当者も憎くて憎くて仕方がなくなります。

「中小企業をいじめて楽しいのか!? 君には血も涙もないのか!?」

「申し訳ございません・・・」

「それに何だ、君は!? ニコニコして何が楽しいんだーー!?」

「いや、私はこういう顔ですから・・・」

こんなやり取りがあちらこちらで展開されたのでした。

地方に拠点を構え、もはや逃げ場のない(というより、地元の企業を責任持って支える覚悟をした)地方銀行に不良債権を押し付ける「メイン寄せ」

私がみずほ銀行から(当時は地方銀行と提携して各地で地方再生ファンドを立ち上げていた)リサ・パートナーズへ転職したのも、この時の地方銀行に対する申し訳なかった気持ちが大きかったのでした。

 

 
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やり場のない怒り・・・高齢者Aさんのケース

お取引先(融資先)の意向を全く考慮せず、ルール通りに機械的に処理して、結果として悲劇を生んだケースをご紹介しましょう。

アパートローンについて保証会社が代位弁済(=銀行に肩代わり)を行った

お歳は60に近かったと思います。アパートローンを利用されている個人事業主のAさんがいました。

事業性のアパートローンについては通常の融資のように融資担当がついて債権管理を行っていました。

Aさんのアパートローンは長期の延滞が解消されなかったため、やむなく保証会社に代位弁済(=ローンの肩代わり)の請求を行いました。

第三者介入をしようとしたものの、時すでに遅し

保証会社への代位弁済の処理日が確定したころ、Aさんは銀行に現れました。強面のスーツ姿の男性と一緒です。

スーツ姿の男性はAさんの経営する会社の「営業部長」という肩書の名刺を差し出し、開口一番言いました。

「オタクの銀行のAさんのアパートローンの件で話がしたい。返済方法についてだ」

誰がどう見ても、Aさんの従業員とは思えないでしょう。「介入屋」か「"自称"コンサルタント」のいずれかか?

いずれにしても第三者介入にはもう慣れっこになってしまった私は淡々と答えました。

「通知が届いていると思いますが、もう来週に代位弁済手続が完了し、ローン債権は保証会社に移ります」

「今オタクに話しても無駄だということですか!?」

スーツ姿の男性は、想定外だったのか、拍子抜けしたような表情に変わりました。

 

「はい。今後の返済については、保証会社と話をしてください」

私がそう答えると、Aさんは小さな身をさらに縮こまらせながら、ぽつりと言いました。

「そうなっちゃったら、もう死ぬしかなぃ・・・」

私は反射的に小さく叫んでいました。

「死ぬとか、そんなこと言わないで下さい!」

(そんなに無理して抱え込む必要はありません! 個人破産して免責受けるとか、方法はいくらでもあります!)

そんな言葉が喉まで出かかりましたが、私が立場上それを言うことは許されません。

 

「Aさん、そんなに思い詰める必要はありません。どうしたら良いか、本屋とかにいけばいくらでもそういう本があります。詳しい人にも相談してみたらどうですか?」

私はそう言って、ちらりと「"自称"営業部長」の男性に目を向けました。

男性は不機嫌そうに私とAさんのやり取りを聞いていました。

 

悲劇的な結果に・・・

しばらく後に、Aさんは亡くなりました。自ら命を絶たれました

銀行の掟を守ることを優先して全力でAさんを救おうとしなかった自分。

クライアントの命さえ救えない似非(えせ)コンサルタントのスーツ男。

問答無用で不良債権のオフバランス化に邁進する銀行。

やり場のない怒りに身が震えました。

 

なお、銀行が第三者の介入に動じることは(余程のことがない限り)ありません。政治家が介入しても同じです。怪しいコンサルタントに騙されないように気をつけましょう。

 
 

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