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銀行の悪しき慣習「お付き合いのお願い」営業を撲滅せよ。勤務先の取引銀行または個人取引がある銀行の営業マンから、「お付き合いで!」とか「お願いします!」といったお願いセールスを受けた経験がある人は多いと思います。特に会社の役職者や財務経理の関係部署にいる人たちの多くは「断ったら融資がストップするのでは?」という恐怖心から渋々協力しているのではないでしょうか? はっきり申し上げます。嫌々に付き合う必要はありません。いやむしろ、そういう悪しき銀行の体質を改善していくためにも、勇気を持って断りましょう。

銀行の営業マンが抱えるノルマの背景

銀行員のノルマは多岐の項目かつ自然体ではまず到達しないレベルの数字が課せられます。ノルマは毎半期(4月・10月スタート)更新され、期が変わったからといってノルマが大幅に削減されることは”基本的に”ありません。

”基本的に”と言うからには、あるノルマ項目が劇的に削減されることもあります。世間でインパクトのある不祥事や問題が起きた時です。例えば、通貨オプションを代表とするデリバティブ取引。多くの取引先が多大な為替差損を被り、倒産してしまう企業も現れた2012年頃から、デリバティブ取引の「お願い」がパタッと止まりました。当時の銀行の担当者に尋ねたら「今はデリバティブはNGです。」と答えていました。

それでも(全社的な不正で昨年問題となった)某金融機関の担当者は、数年前の円安が相当に進行したタイミングで「月5万ドルの通貨オプションを”協力”してください。」と開口一番”お願い”をしてきました。会社の輸出入の詳細をヒアリングもされていなし、為替リスクの説明もありません。「そういう話をする担当者は信用できない。」と説教したところ、1年近く現れなくなりました。この金融機関の管轄省庁は金融庁ではなく経済産業省です。金融庁ほど厳格なコントロールが出来ていなかったのでしょう。

ちなみに説教した彼は1年後に目覚ましく成長して失地回復しました。見事な提案営業を展開して数億円の取引を獲得。彼の結婚式に社長名で祝電を送るほど良好な関係となったのです。

 

金融派生型デリバティブ商品の勧誘は麻薬中毒

私が融資外為課長をしていた富士銀行(後にみずほ銀行)の新潟支店は、全国レベルでみてもデリバティブ関連収益のノルマが大きい営業店でした。燕・三条地域に輸出入が盛んなメーカーのお取引先が相当数あり、為替ヘッジのニーズが相対的に多かったためです。

半期ノルマをクリアすると、次のノルマは更に上乗せされて示達されます。どんどん膨らんでいきます。店舗の収益目標の大半はデリバティブ収益でカバーされる状態になっていました。デリバティブ取引が収益の柱になった理由は「アップフロント収益」です。

デリバティブ取引の契約期間が5年とすると、契約時に5年分の収益がみなしカウントされるのです。契約金額とスプレッドによっては1つの契約で数千万円~数億円のアップフロント収益が獲得できます。単純なスワップ商品だと収益が少ないため、派生型のオプション商品の営業がメインでした。

 

「デリバティブ収益って麻薬だよね。」と、よくボヤいていました。

 

一度このデリバティブ取引のアップフロント収益に依存してしまうと、抜けられずにエスカレートしていく一方なのです。麻薬への依存と似てます。

 

当時の銀行の若手は知りませんが、当時に中堅だった銀行員は、1995年の円高ピークの状況を経験しています。この時も豪ドルオプションを中心に為替差損が問題化しました。その円高リスクの恐怖を知りながら、銀行の企画セクションは何でまたデリバティブ収益獲得に躍起になるのか?心に葛藤を抱えながら取引推進を行っていました。

 

銀行のデリバティブ取引勧誘は国会でも糾弾された

参考に、衆議院において”デリバティブ取引が問題視された”質問の一事例。質問者は、昨年(2017年)に時の人となった稲田朋美、元防衛大臣。

平成二十四年三月三十日提出  質問第一六一号
金融機関による為替デリバティブ取引に関する質問主意書

報道によると、平成十六年以降銀行などの金融機関が中小企業を勧誘し契約した為替デリバティブ取引が、現在の円高により、中小企業に多大な損失を与えているとして、問題とされている。
また、報道された民間調査会社帝国データバンクの調査によると、平成二十三年における円高に起因する倒産件数は、八十五件に達し、集計を開始した平成二十年以降最多だった平成二十二年を四十六.六パーセントも上回り、そのうち三十二件が為替関連のデリバティブ取引による倒産であるとのことである。

上記の質問主意書より引用

 

お付き合いを断ったら融資を受けられなくなる?

大丈夫です。

営業マンは、基本的に「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」というスタンスです。「断られるのが当たり前」と思っています。逆に「この取引先は”お願い”を聞いてくれる」と思われたら最後、際限なく”お願い”が繰り返されるでしょう。

またその部署の銀行員は数年で異動します。または係替えで1年も経たずに担当から外れるかもしれません。担当者が変われば「協力してあげた」(心情面の)貸借関係はゼロリセットされます。

総合振込や給与振込等の有無が(取引先企業の)格付のスコアリングに加点となる仕組みはありました。しかしその影響は微々たるものです。「給与振込の実績が欲しいので1件だけ取り組みしてくれ」というお願いに応じるまたは断ったとしても、格付がランクアップまたはダウンすることはありません。

もし融資を断られたら、それは別なところに問題があるはずです。

 

時代錯誤。真っ当なビジネス・サービスを期待

いまだに「お付き合いで・・・お願いします」とアプローチしてくる銀行が後を絶ちません。百歩譲って、最後のひと押しでそう言うのならば、まだ理解はできます。しかしいきなり「お付き合いで・・・」となるとドン引きです。

私がCFOとして2008年から再生に取り組んだオンデーズ[1]の債務者区分※は、長いこと破綻懸念先~要注意先でした。さすがにその頃に「お願い」してくる銀行は稀でした。

しかし正常先になってからは、もう臆面なく「お願い」をしてきます。担当者は数年毎に替わるのでこちらの銀行取引に対する遺恨に思いが及ばないのは仕方ないですが・・・

※債務者区分については後日解説しましょう。

 

先日、財務経理の担当に指示しました。

「銀行から”お付き合い”をお願い」されたら
「メガネの購入とバーターであれば検討する」と返事しなさい。

最低ロットは50本から・・・バブル時代のバーターと比べたら「屁」みたいなものです。

当然、会社側にメリットのある提案であればウェルカムです。「銀行と取引先の蜜月な関係」はもう大昔の話です。有用なサービスを提供して対価を獲得する・・・歯を食いしばって真っ当な「ビジネス」に集中すべきです。

そのためにも安易な「お願い」に走ってはいけない。必要なのは「お願い」の封印。更に取引先が勇気を持って断るようになれば、銀行側はノルマの体系含めて諸々を見直しせざるを得なくなるはずです。

 

適正な銀行業務で達成しうる適切なノルマを!

私は決してノルマ主義を否定しているわけではありません。

「いきなり全てのノルマを撤廃したらどうなるか?」

かつて富士銀行は壮大な実験を行ったことがあります。

 

以下は2010年に私がオンデーズ社内に発信した檄文です。

バブル絶頂期、富士銀行と住友銀行は「収益トップバンク」の
熾烈な競争を繰り広げ、世間は「FS戦争」と呼んだ。

1991年春、「富士銀行赤坂支店事件」が発覚。
戦後最大の金融スキャンダルとも言われ、橋本龍太郎蔵相が
引責辞任に追い込まれる等、政界をも巻き込む大事件となった。

この事件後、富士銀行の新頭取は各種目標(ノルマ)を撤廃。
「顧客支持トップバンク」という抽象的なスローガンのみで、
数字の箍を外された現場は混乱。一気に弱体化する。

しばらく後に目標制度は復活するものの、時すでに遅し。
「弱者連合」興銀、第一勧銀との三行合併で「みずほ」が誕生。

戦後「最大最優」のリーディングバンクとして日本経済を支えた
富士銀行はその歴史に幕を閉じることとなった。

一方、
住友銀行は収益力・効率化に磨きをかけ、三井銀行を吸収。
規模では他の大型合併銀行に水を空けられてはいるものの、
現時点では最強のメガバンクと呼んで良い。

何が言いたいかというと、

歴史のある名門企業であっても、「数字への拘り」を一瞬放棄した
ことで、坂道を転がり落ちたという事実。

「綺麗事、事なかれ主義」の本当の恐怖。

吹けば飛ぶようなベンチャー中小企業においては言わずもがな。

脚注

1. noteを参照(一部フィクションも含む)

売上20億,負債14億,赤字2億『絶対倒産する』と言われ、メガネ業界内ではただの質の悪い安売りチェーンと馬鹿にされ続けていたOWNDAYSが10年間で奇跡のV字回復を遂げて、...

 

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