「東京」の文字を消しただけの三菱UFJ銀行、なにそれ? 2018年3月1日、三菱東京UFJ銀行は、その名称から「東京」の文字を外して三菱UFJ銀行となりました。「東京」の由来である東京銀行に関する話題から、銀行の提携・合併の変遷やみずほ誕生時の裏話までを簡単に。
「東京銀行」特異な外国為替銀行
「東京銀行」といえば、私たちバブル世代にとっては「外国為替専門銀行」※として、BOT(バンク・オブ・トーキョー)の呼称は特殊な響きを持っていました。
※外国為替専門銀行
外国為替銀行法によって大蔵大臣の免許を受け、主として外国為替取引および貿易金融を営んだ銀行。平成10年(1998)外国為替銀行法の廃止に伴い、該当する銀行はなくなった。
デジタル大辞泉より引用
前身は「横浜正金銀行(よこはましょうきんぎんこう)」
東京銀行の前身は、横浜正金銀行。明治初期の1880年、政府の肝いりで設立された国策銀行です。ジョン・レノンの未亡人オノ・ヨーコの父親が横浜正金銀行サンフランシスコ支店の重役だったことでも知られています。
横浜正金銀行は、戦後すぐにGHQにによって解体・清算され、外国為替銀行としての役割は新たに設立された東京銀行へ引き継がれました。
旧横浜正金銀行の本店は重要文化財
戦前の横浜正金銀行の頭取は日銀総裁への登竜門ともなっていました。名門銀行らしく、その本店の建物は優れた意匠を持ち、国の重要文化財に指定されています。
銀行の提携・合併の編纂を知りたい!
全国銀行協会ウェブサイトを見よう
全国銀行協会のウェブサイトに分かりやすく変遷をまとめた図があります。
年齢が40代から上の世代には「懐かしい」、その下の世代には「へー、知らなかった」・・・そんな興味深い資料になりましょう。
全国銀行協会『平成元年以降の提携・合併リスト』
そもそも「UFJ」って何の略!?
「United Financial of Japan」の頭文字です。Financialという形容詞は文法上おかしくないか? とツッコミを入れたユーザーもいたそうですが、当時のUFJは「海外の企業にも同様な表記例はある」とウェブサイトのFAQで回答していたそう。
いずれにせよ、ユーザー目線に立てば、現在の三菱UFJに「へんてこ英文の頭文字略称」を残す必要性を全く感じません。
新聞記事によれば、いっときは「ひらがな行名」も検討した経緯があります。顧客目線に立ったイケてる銀行名に変えることができた千載一遇のチャンスだったのに、もったいない!!(でも「きらら」は「あかね」はイケてないと思います)
「きらら銀行」「あかね銀行」――。三菱東京UFJ銀行は15日に「三菱UFJ銀行」への改称を発表したが、内部ではこんな名称も検討されていた。だが2年ごしの議論の結末は、統合から20年あまりを経て、現行名から「東京」を消すという選択だった。
ひらがなの行名は巨大財閥の「三菱」を外すことへの反対が根強く、採用を見送ったようだ。最後は持ち株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と名前をそろえたほうがよい、という結論になった。
日本経済新聞 2017/5/16 より引用
「さくら」の名称が復活してほしい
個人的には「さくら銀行」という名称が比較的短命で消滅してしまったのが残念です。(太陽神戸三井銀行が改称→三井住友銀行の誕生により消滅)
美しい日本の象徴のひとつでもある「さくら」。素敵じゃないですか!?
「みずほ」の新名称の発表時の裏話
新名称は「売春婦」!?
2002年に大手銀行3行(富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行)が合併して誕生した「みずほ」フィナンシャルグループ。その新名称「みずほ」が行内公募を経て公表されたのは1999年のことでした。その当時、富士銀行の秘書室にいた知人から聞いた裏話。
「みずほ」という名称が発表された直後、ニューヨーク支店ではちょっとした騒ぎになったそうです。「とんでもないジョークだ!」「クレージーだ!」「やめてくれー!」
その理由は「Ms. Ho(ミズホー)」と聞こえるから、というもの。
Ho(ホー)は 売春婦のことをいうスラングです。
日本語で言えば「売女(ばいた)銀行」という感じでしょうか?
不機嫌となった頭取
ニューヨーク支店の騒ぎを当時の頭取に報告したところ、あからさまに不機嫌となり、
「今更そんなこと言われたってどうしようもないじゃないか! 広告代理店のネガティブチェックは済んでいるんじゃないのか!?」
と吐き捨てたそうです。
ちなみにそれから2年後、そのニューヨーク支店が入居するフロアに航空機が突入(911テロ事件)。12名の仲間を失いました。