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ダイナースクラブ(Diners Club)の変遷と独自性。あまり知られていませんが、バブル時代、ダイナースクラブカードを発行する「日本ダイナースクラブ」は富士銀行のグループ会社でした。当初は富裕層向けのブランドからスタートし、金融環境に翻弄されながら変遷してきた歴史を振り返ります。

ダイナースクラブの歴史

クレジットカードのダイナース起源説は誤り

ダイナース起源説のもととなっているのは次のような逸話。

「ニューヨークのレストランで、実業家のマクナマラが食事をしたとき、財布を忘れたため家族に届けてもらったことがきっかけとなり、現金がなくてもツケ払いで食事ができるようにと友人の弁護士と共に『ダイナースクラブ』を設立。クレジットカードを発行した」

クレジットカードDB クレジットカード温故知新(1) より引用

この説は、クレジットカード研究家の櫻井澄夫氏がインタービューで否定しています。

  • この逸話はダイナースクラブの広報係の作り話
  • 日本ダイナースクラブも社史で『ダイナース起源説』を否定している

櫻井 おそらく「ダイナース起源説」はあまりに有名だったため、日本ではいろいろな人が引用、あるいは孫引きを繰り返した結果、広まったのでしょう。

確かにダイナースクラブはカード会社の老舗ですし、「ダイナース」は“食事をする人”という意味なので由来とも一致していますが、この話は同社の広報係が新聞記者の注意を引くためにした作り話がもとになっているそうです(L・マンデル『The Credit Card Industry: A history』、根本忠明、荒川隆訳『アメリカクレジット産業の歴史』日本経済評論社、2000年)。

実は、日本ダイナースクラブもこのダイナース起源説を否定しています。同社の社史には「(クレジットカードは)1920年代に石油小売業者が紙製のカードを発行したのが始まりと言われる」(『日本ダイナースクラブ 30』1990年)とあり、ダイナースクラブ以前からクレジットカードが存在していたことを認めているのです。

クレジットカードDB クレジットカード温故知新(1) より引用

今回お話をうかがったのは、クレジットカード史研究家の櫻井澄夫先生。 櫻井先生はJCBに勤務され、海外での加盟店開拓に奔走。そのご活躍の様子は、JCBが国際ブランドの...

 

「レストランで使用できる」クレジットカード

上記のインタビューで触れられていますが、当時ほとんど存在していなかった「レストランで使えるクレジットカード」としてダイナースクラブが生まれました。そのため『Diners=食事をする人』という名前になったのです。

ダイナースクラブは、その名の通り、買い物、石油、航空、運輸、電話、鉄道などでは、早くからクレジットカードが発達していたものを、レストランで使用できるカードが殆どなかったので、その穴を埋めるために考え出されたものである。それ故「食事をする人」のためのクラブ、というネーミングになっている。また、サードパーティーが発行し、汎用性を高めたのが、それまでのクレジットカードとは異なるダイナースの成功の理由となった。

ダイナースクラブ Wikipedia より引用

日本ダイナースクラブ設立

1960年(昭和35年)12月、日本交通公社(現在JTB)と富士銀行が共同で「日本ダイナースクラブ」を設立します。ダイナースクラブのウェブサイトでは『日本で最初のクレジットカード』と謳っていますが、ほぼ同時期にはJCBカードが発行されています。上記と同じく、クレジットカード研究家の櫻井氏のインタビュー。

「日本ダイナースクラブが最初」という説がありますが、私が調べたところでは、日本最初の汎用クレジットカードは、昭和36年(1961)3月頃に日本ダイナースクラブとJCBによってほぼ同時に発行が開始されたとみてよいでしょう

・・・中略・・・

日本ダイナースクラブは昭和35年(1960)12月、JCB(当時、日本クレジットビューロー)の設立は翌年1月です。両社とも、設立されてからカードの発行までに数か月かかっているのは顧客の審査と、もう一つあることをしなければならなかったからです。

クレジットカードDB クレジットカード温故知新(2) より引用

前回は、櫻井先生に世界最初のクレジットカードについてお話をうかがい、通説では知られていなかった「1911年のクレジットカード」をご紹介いただくと共に、クレジット...

 

シティグループ傘下に

2000年、全世界でダイナースクラブはシティグループ(当時シティコープ)に買収されました。日本ダイナースクラブも、シティコープへ売却されて「シティコープダイナースクラブジャパン」となり、富士銀行のグループ会社ではなくなりました。

 

ディスカバー傘下に

2008年4月、経営不振にあえぐシティグループはダイナースクラブをディスカバー・フィナンシャル・サービシスへ売却します。

しかし日本では、ディスカバーカードへのブランド売却後も、引き続きシティバンク銀行が独占フランチャイズ権を維持し、業務運営を続けていました。

 

日本では三井住友トラストが取得

2015年3月、日本においてもシティバンク銀行から三井住友トラスト・ホールディングスが「シティカードジャパン(株)」社を買収し「三井住友トラストクラブ(株)」となりました。

 

ハードルが高かったダイナースクラブカード

公表されていた入会資格

バブル時代の当時はダイナースクラブカードへの申込基準(入会資格)が公表されていました。それは次のすべてを満たすこと。

  • 年齢33歳以上
  • 年収800万円以上
  • 持家あり
  • 上場企業またはそれに準ずる企業の役職者

ネタかと思われるかもしれませんが、パンフレットにも記載されていました。

 

申込の特例

とはいえ、そんな基準をガチガチに守っていたら、獲得ノルマを達成するのは困難です。中小企業の役員クラスの場合、申込書に推薦文を書いて支店長が押印すれば、審査は受付してもらえました。(結果として謝絶されたケースもありましたが)

また、富士銀行の行員であれば(公開されている基準に満たない)大学を出たばかりの新入行員でもダイナースカードを持てました。というより、半強制的に持たされました。年会費1万円が割引になることもなく、財布への負担としては小さくなかったです。

2000年に日本ダイナースクラブがシティコープへ買収されると、速攻で退会しました。しばらくしてからシティコープから「再入会のお願い」の手紙が届きました。きっと相当数の富士銀行の関係者がここぞとばかりに解約したのではないでしょうか。

 

ダイナースクラブの独自性

今では私もダイナースクラブの利用を再開しています。他社のクレジットカードと大きく違う点は、

  • 1回払いしか選択できない
  • ショッピング利用限度枠の表示がない

ショップでよく「1回払いでよろしいでしょうか?」と聞かれるのですが、ダイナースクラブの利用時にはリボ払いや分割払いが指定できません。(後からリボへの変更は可)

また、カードの送付書やネットのサイトには自分の利用限度額が書いてありません。一応社内では限度額の目処は設定されているのでしょうが、通常使う範囲においては全く気にしなくても大丈夫な水準だと言われています。

VISAやマスターと比べれば、海外で使えないホテルや店が多いのは事実です。(利用しようとした経験から、2~3割は使えなかったイメージ)

 

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