学生時代に出版社でコピー取りのアルバイトをしていました。単調に見える作業でも工夫を重ねることでスピードアップさせていく。そのことで面白みやチャンスも生まれたという体験話です(文中敬称略)。
講談社の医学辞典の制作現場でアルバイト
大学4年生の時の1年間、講談社でアルバイトをしていました。
具体的には「現代家庭医学大事典」を制作する現場です。4,5名のフリーライターの方がたくさんの資料を参考にしながら、文章や図表を作ってコンテンツを作成していました。
この作業現場を見てわかりました。本業がめちゃくちゃ忙しい医学の専門家の方たちが、事典のコンテンツを作ることなどありません。
そりゃそうです。専門家の人たちはあくまでも「監修者」なのです。専門外のフリーライターが作成した記事の内容をチェックするだけです。
基本の仕事はコピーとり
ライターの方々は、大量の資料を机のわきに置いてコンテンツを作っていきます。私の主な仕事は、膨大な資料を書籍や論文などからコピーを撮ることでした。
ときには、信濃町にある慶應義塾大学病院の図書館(北里記念医学図書館)に行って、医学書や文献のコピーを取得してくることもありました。
2017年は「医学部開設100年記念」の年。北里記念医学図書館(信濃町メディアセンター)入り口の柱にも年初から記念の装飾が行われています。遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。(YS-11) pic.twitter.com/b93CWvugMf
— 慶應義塾大学信濃町メディアセンター (@MedLibKeio) 2017年1月11日
単なるコピーと侮るなかれ
当時のコピー機にはオートシートフィーダー(=1枚ずつ用紙をコピー機に送り込む腐造装置)はありませんでした。
綴じられている書籍はもちろんですが、バラバラの紙の束も1枚ずつ機械のカバーを開閉しながらコピー作業をしなければいけません。
何も考えずに行っていれば、単調な作業でそのうち嫌になってしまいそうでした。
そのため私は「いかに時間をロスせずに最速タイムでコピーをとることができるか?」に集中しました。
コピーのスピードを極限まで高める
コピー撮り高速化の一例をあげてみましょう。
まずコピー機の動きは大まかに分けると4つのパートに分かれます。
1.「ガーー」と始動して
2.ランプが点灯し読み取り部が左から右へ移動
3.ランプが消え、読み取り部が右から左へ戻る
4.「ガーー」の音が消える
普通であれば、4まで待って音が消えてからカバーを開けて原稿を入れ替えます。
しかしそれでは5,6秒ロスします。
右手に次の原稿ページを持って、左手でカバーをつかみながら、読み取り部のライトの移動をじっと観察します。そして光が消えると同時にカバーを開けて原稿を入れ替えるのです。
そして機械の音が消える同時にコピーボタンを押す → すばやく原稿を持ち替える
このプロセスを気をつけるだけでも、何も考えずにコピー機を使うよりも、1枚あたり10秒は時間短縮ができます。
コピー機の音の微妙な変化を覚えれば、読み取り部の光を目で追わなくてもコピー終了のタイミングは分かるようになります。
するとその間はコピー済の原稿を整理したり、別の作業が同時に可能となります。
コピー機を使う前後にたくさん工夫するポイントがある
スタート前の原稿を置くポジションや、ペーパーの持ち方(表裏? 方向? どの指で? どれくらいの力で?)とか、工夫する方法が無数にあります。
複数部のコピーをとった後のさばき方やまとめ方、何度も試行錯誤を繰り返し自問自答しながら、最速を目指して取り組んでいました。
思ったようにスピードアップができると、心の中で「ヨッシャ!」とガッツポーズをとることもあり、もしかしたら周りからはニヤニヤして見えることもあったかもしれません。
工夫を積み重ねれば、楽しいし役に立つ
半年くらい、そんなプロセス改善を繰り返していると「自分はひょっとすると日本で一番コピーとりが速い学生かもしれない!」とうぬぼれるくらいの物凄いスピードになりました。そうなると楽しいですし、ライターの方々からの信頼も厚くなります。
コピーのスピードアップによって浮いた時間にはワープロ(当時はPCでなく大きなワープロ専用機です)の使い方を教えてくれて、文献の入力の仕事も任されるようになりました。
このアルバイトで得た工夫と経験は、社会人になってからも相当に役立ちましたね。