バブル期の銀行「不動産担保に完全依存」融資姿勢は狂気沙汰

投稿日:2018年2月 23日(金) 更新日:

新宿のビル街の航空写真

photoAC

バブル期の銀行の貸出姿勢と担保の基本。バブルの時代、不動産の価格が下がることを想定していないような銀行の融資スタンスに商品開発。振り返ってみれば、あまりにも異常でした。

法務局で不動産担保の調査

三つの銀行が合併して誕生したみずほ銀行。(合併前の銀行の一つである)富士銀行に入行し、市ヶ谷支店の融資課へ配属された私は、副支店長から呼ばれました。

 

「奥野くん。これから法務局へ行こう。」

「法務局って登記所のことですか?」

「そう。不動産登記簿が置いてある所だよ。登記簿の読み方は大丈夫だね?」

「はい。初任者用テキストで勉強しました。」

 

副支店長は満足そうにうなずくと、私を連れて法務局へ出発しました。

 

閲覧してメモせよ!

法務局に着くと、副支店長はをカバンからファイルを取り出して言いました。

 

「このリストの住所は"住居表示"だよ。お目当ての土地の登記簿を調べるのには、その土地の"地番"を調べる必要があるんだ。」

 

副支店長はそう言うと、棚にある大きな地図帳を取り出して、テーブルに置きました。

『ブルーマップ』です。 (見本と特徴はこちら のゼンリンのサイトへ)

 

「市ヶ谷砂土原町●丁目の●●・・・・・・うん、ここだ。ほら見てごらんよ。地番は●丁目▲になっているだろ?この番号を閲覧申請書に記入するんだ。」

私は、備え付けの『登記簿の閲覧申請書』にその地番を記入して窓口へ提出しました。

 

受付番号を呼ばれるまでイスに腰掛けて待ちます。副支店長に質問しました。

 

「副支店長、登記簿で担保の設定状況を調べるのですね?」

「そうだよ。あのリストは、年商●●億以上で、うち(富士銀行)と取引のない会社のリストなんだ。地域別にまとめて担保の設定状況を調べるんだ。」

 

「どの項目を記録すればいいですか?」

「まず、甲区の不動産の所有者だね。そして乙区で担保の設定があるかどうかを見る。

  • 担保の種類
  • 設定金額
  • 設定日
  • 担保権者
  • 共同担保の有無

をざっと、このペーパーに書き写してほしい。」

 

「閲覧申請書には3つの物件しか書いていませんよ。」

「該当する地番の登記簿を含むファイルを渡されるから、周辺の物件も一緒に調べることができるんだ。」

 

「閲覧のための登記印紙は”不動産一つにつき●●円”と書いてありますよ?」

「いーんだよ!手早く書き写せば分かりゃしないから。」

 

そうこうするうちに受付番号を呼び出され、副支店長と私は閲覧室に入りました。法務局の係の人から分厚いファイル3冊を渡されました。

 

「さあ、写して!写して!」

「はい!」

 

担保の基本のおはなし

"担保の種類"には大きく分けて2つあります。

  • 抵当権
  • 根抵当権

 

「抵当権」は、特定の融資に紐付きとなります。

返済等で融資残高が減少すると担保される金額も減少していきます。

一般の住宅ローンに設定される担保種類はこの「抵当権」です。

 

「根抵当権」は【根】という言葉が入っているとおり、融資の残高と関係なく、設定された金額(「極度額」という)が担保され続けます

銀行側からしてみれば根抵当権の方がメリットが多くなります。

  • 融資の都度、担保設定の手続きをする手間が省ける
  • 他の銀行が融資に参入しにくくなる。取引先の囲い込み。
  •  

貸出限度枠を拡大せよ!

当時の富士銀行には『Fライン』という融資商品がありました。

(主として不動産)に根抵当権の担保設定をし、その極度額の範囲で借入や返済が自由にできるというものでした。使途は問いません。この借入枠を使って株式や投資信託に投資している先もありました。

既存のお取引先に対しては、定期的に担保不動産の評価見直しを行います。バブルの時代ですので、再評価を行うたびに価値が上がっていきます。そして担保価値に余力があると判断すれば、片っ端から『Fラインの極度増額』をセールスして回りました。

 

「いや。そんなに借入しないから・・・」

「いいんです。とりあえず枠を増やしてください。使わなくても良いですから!」

 

本部からは「Fラインの枠増ノルマ」が毎期割り振られていました。そのため、(利用するか否か関係なく)とにかく枠を増やしてもらうことに注力した時期もありました。

 

副支店長と一緒に法務局へ行って収集した資料は、新規開拓に活用されます。あらかじめ不動産担保の担保価値の余力を試算したうえで「融資枠を●●億円設定しませんか?」とセールスして回ったのでした。

 

「不動産の価値が下がったらどうする?」なんてことを誰も考えていなかったみたいでした。下のグラフのとおり、1991年までずーーーーっと地価は上がり続けていましたので・・・想像が及ばなかったのでしょう。

地価公示の都道府県(全国)最高価格地(住宅地・商業地)を用いた平均価格指数

出典:国土交通省ホームページ (平成29年地価公示

 

私は日本のバブルの破綻を見ているので、サブプライムローン危機が起こる前の米国の不動産価格上昇は、とても不安な気持ちで見ていました。一度経験すれば人間は賢くなるはずなのです。本当ならば。

 

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