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【検証】北村晴男弁護士「しくじり先生」で言う痴漢冤罪の回避術とは

昨年(2017年)8月、テレビ番組『しくじり先生』で北村晴男弁護士が提言した『痴漢冤罪を回避する術』が、「画期的!」や「神解説!」とネット上を駆け巡りました。その内容は「まずは両手を上げ『今から私は何も触らない。DNA検査をやってくれ!』と叫ぶ」ということ。この放送に至った経緯を整理しつつ、痴漢冤罪の回避法の真偽について推論します。(文中敬称略)

痴漢の冤罪事件の恐怖

痴漢行為の事実がなくても、職を失い、人生を狂わせる

2001年の春、私が富士銀行で新任課長用の集合研修を受けたときのこと。研修の後半で労務管理等の説明を終えた人事部の講師が真顔で叫びました。

「お前らな。 痴漢は冤罪であろうと何だろうと、捕まったらクビだからな! クビ!」

そして「電車に乗ったらカバンは網棚に乗せて両手を上で組め・・・」と、実演までして見せるのでした。それくらい当時から痴漢によるダメージは大きく、かつ冤罪が含まれるものと認識されていたのです。

女子高校生の深層を垣間見て恐怖した支店長

ある支店長が自身の恐怖談を私に語ってくれました。

「通勤電車の中で二人組の女子高生のおしゃべりがうるさくて仕方なくてさ、『もう少し静かにしろよ!』と注意したんだよ。」

「そうしたら二人はおしゃべりを止めたんだけど・・・『何あのおやじ!?マジむかつく。今度ハメてやろうぜ。』ってヒソヒソ話してるんだ!次の日から車両を変えたよ。全く恐ろしいよな!」

冤罪にかけられる危険がどこに転がっているかわかりません・・・

北村晴男弁護士の痴漢冤罪の回避術

北村晴男弁護士の『しくじり先生』の授業に至るまでの経緯

北村晴男弁護士は、2016年3月20日のテレビ番組で『行列のできる法律相談所』で、痴漢を疑われた場合の適切な対応として、次のように発言しました。

『本当にやっていないなら立ち去る、逮捕される前に全力で走って逃げる』(テロップ)

この放送から1年経ったころ『痴漢を疑われた男性が線路に下りて逃亡する』ニュースやツイートが頻繁に流れるようになりました。2017年3月~5月で10件以上。5月には、線路に降りた男性が後続列車にはねられ、ついに死亡者も出ました。

するとその前の年に『行列のできる法律相談所』で『逃げるべき』と発言した北村弁護士が槍玉に挙げられるようになりました。

北村弁護士が『しくじり先生』で、前年の発言を撤回して『DNA鑑定を要求する』方法を提言するに至ったのはこのような経緯があったのです。

痴漢冤罪のDNA鑑定の証拠力については異論ある

痴漢冤罪のDNA鑑定については『無実を証明する証拠としては弱い』という法律家の意見もあります。

②着衣のDNA鑑定
痴漢事件の場合、女性が触られた部分の着衣に犯人のDNA型が付いているかを調べることもあります。

確かに、被疑者の着衣のDNA鑑定でDNA型が検出されてしまえば、被疑者がその服の部分に触れたことは強く推認されるでしょう。しかし、問題は、検出されなかったときに「触っていない」となるのか、ということです。

普通は、DNA鑑定でDNA型が検出されなかったのだから無実の証拠となると考えますが、痴漢冤罪事件の場合、実はそうは判断されないのです。DNA型が検出できなかったとしても、「着衣にDNAが残らなかっただけで、触ったか触っていないかわからない」と評価されてしまうことがあります。

③繊維鑑定、指紋
同じ問題は、被疑者の手や指から被害者の服(たとえば下着)の繊維が付着しているか、という捜査についても言えます。付着していれば、触れたことが強く推認されてしまいます。

しかし、被疑者の手に被害者の服の繊維が付いていなかったとしても、触れていないことの証明にはならないのです。服の繊維がついていなかったとしても、「触れたけど繊維が付かなかった、もしくは繊維は付いたけれども捜査機関に採取される前に自然と取れてしまった」と言われてしまう可能性があります。要するに、「DNA鑑定、繊維鑑定、指紋」は、捜査機関側に有利な点については強く利用でき、被疑者に有利な点については強く利用できない証拠なのです

弁護士法人泉総合法律事務所のサイト から引用

痴漢の捜査においては以前からDNA鑑定は利用されていました。ただしどちらかと言えば『犯行を立証するために』警察が被疑者に任意で鑑定を求める用途がメイン。

北村弁護士の『DNA検査を求めよ!』提言の発端と有効性を推論

2ちゃんねるに興味深い投稿があります。

56 :名無しさん@おーぷん :2017/05/17(水)22:37:14 ID:Fzt ×
ついこの間、痴漢冤罪で引っ張られた。

「素直に認めれば罪が軽くなるよ(ニヤニヤ」みたいに言ってきた警官の無能さに思わず、「俺は捕まってから両手洗ってない(駅員が証人)し、本当に触ったなら手から繊維片が出るはずだ。女の服にも俺の皮脂や皮膚片、場合によっては指紋が付いてるから調べろ」と言ってやった。

警官は「そんなことまでしなくても、被害者の証言があるし……」とか言ってたが「いいからとっととやれ。それとも証拠隠滅に加担するつもりか?」と言ってやったら、しぶしぶ鑑識(?)を呼んで両手の繊維片検査と指紋採取。女の服も女性警官が別室でいろいろ調べたらしい。

結果、俺の手からは繊維片の欠片すら検出されず(これは後日分かった)。女の服から「指紋も男性の物と思われる皮膚片も皮脂も検出されなかった(こっちはその場で分かった)」ということで無罪放免。

しかし俺もいい加減頭に来てたんで「手で触られたと言ってた女の服から、皮脂も皮膚片も検出されないこと自体おかしいだろ」と突っ込み。ついでに「その女、過去にも痴漢騒ぎ起こしてるんじゃないか? ほとんどが示談だと思うが、警察に記録残ってるだろ」と言ってやったら、女の顔が露骨に青ざめた。

結果、予想通り今年だけで4月末の時点で10回以上痴漢被害に遭い、内7件を示談にしていたらしい。

「それだけで冤罪詐欺とは言えないだろうが、お前ら無能が毎回俺みたいに繊維片検査や着衣検査をしてれば、こんなことにならなかったよなぁ?」と、警官に言ってやった。最後に「今回の件は県警の監察室にに報告させてもらう。あとは知らん」と言って会社に向かった。

後日、繊維片検査の結果、上記の通り俺は白だと判明。女の方は「仕事のストレスでやってしまった。もう二度としません……」と言ってたらしいが、またやるだろうな(なんせ示談金詐欺だし)。

今までにあった最大の修羅場を語るスレ9  より引用

注目すべきはこの投稿の日付です。「2017年5月17日」つまり北村弁護士の提言が放送された「2017年8月20日」より3ヶ月前のタイミングです。この投稿の内容は別人がコピペして拡散したため、一部のネット民は『北村弁護士のしくじり先生を観て書いた創作』と決めつけています。しかし元を辿ってみると、日付の前後から『北村弁護士の話を聞いてこのストーリーをでっち上げたのでない』と判断できます。

これまでの情報をもとに事実関係を整理してみましょう。

2016年3月20日 北村晴男弁護士が『列のできる法律相談所』で逃亡を提言
2017年3月14日 痴漢を疑われた男性が線路を走って逃亡する動画がニュースに
2017年3~5月 “痴漢を疑われて線路に降りて逃亡”の事件報道が続出
2017年5月15日 痴漢を疑われた男性が線路に飛び降り、後続の列車にはねられ死亡
2017年5月17日 2chにDNA鑑定を要求して難を逃れた体験談が投稿される
2017年8月20日 北村晴男弁護士が『しくじり先生』でDNA検査を要求する方法を提言

2014年2月にはこんな記事があります。少なくとも2014年以前から『鉄道警察がDNAを採取キットを常備して』いることを知っている人は存在していたことが分かります。

痴漢の冤罪対策として鉄道警察ではDNAの採取キットを常備

・・・中略・・・鑑定でわかるのは親子関係だけではない。サラリーマンにとって一昔前まで、満員電車は証言ひとつで痴漢に仕立て上げられる可能性がある怖い場だった。しかし、現在、鉄道警察ではDNA採取キットを常備している。相手女性の肌を直接触っていれば、指や手に女性の細胞が残るためだ。・・・中略・・・

週刊ポスト2014年2月21日号 ー livedoor News より引用

まとめ(私の推論)

■痴漢の疑いをかけられた男性の線路逃亡事件が増えたため、北村弁護士が1年前の自身の発言に責任を感じた。

■たまたま2ちゃんねるに書き込まれた(恐らく体験実話と思われる)繊維片検査・着衣片検査の手段を北村弁護士が知る、または教えてもらう。

■自分なりに調査(テレビ局も協力)して科学的根拠の裏付けも取り、新提言としてテレビで放送した。

DNA検査の効力は『触っていないことの証拠』としては完全ではない。しかし無罪放免となる可能性は高くなる。また起訴されて裁判となった際には有利な証拠として作用する可能性が高い。

『DNA検査を要求』したのにも関わらず検査してもらえなかった場合には、裁判でその旨を主張すれば有利になる可能性が高い。

「可能性が高い」と歯切れが悪いのは、実査に判例等のサンプルがなく断言ができないからです。

以上、まじめに調査してみました。
通勤電車を利用している私にとっても他人事ではないので・・・

【注】私は法律の専門家ではありません。個別の事案につきましては専門家にご相談のうえご自身でご判断下さい。

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