オンデーズが再生途上にあった時期、急成長している有望企業としてベンチャーキャピタルが盛んにアプローチしてきました。私が「今は無理だ」と言っても「大丈夫です!」と根拠のない見得を切って資料を入手した挙げ句に、手のひらを返し暴言を吐く酷い連中がいました。(文中敬称略)
FCショーのド派手演出に舞い上がったVCの営業マン
1つめの事例は、OWNDAYSがフランチャイズ・ショーでかましたハッタリに、勝手に舞い上がったベンチャーキャピタル(VC)A社の営業マンの失礼極まりないエピソードです。
フランチャイズ・ショーに初出展したオンデーズ
毎年3月に東京ビックサイトで開催される「フランチャイズ・ショー(FCショー)」(日本経済新聞社主催)は、FC(フランチャイズ)に関する国内最大規模の展示会です。
ビジネス小説『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』に描かれたように、田中修治は2008年2月に”メガネ小売チェーン OWNDAYS / オンデーズ”を買収。
翌年の2009年3月、OWNDAYSはFCの募集を本格化するためにFCショーへ初出展したのです。
中途半端は許さない!?アイランド(島)ブースで目立て!!
当時のOWNDAYSは、2008年7月末に銀行借入の返済リスケジュール(=約定の返済金額を減額すること)を敢行し、まだ資金繰りが火の車の状況でした。
しかし社長の田中修治は、FCショーに10コマ(1コマ=出展区画の最小単位)の出展ブースを作ることを主張。
FCショー出展プロジェクトの担当者を中心に、周囲は心配して田中に反対しました。ところが・・・
「10コマでやらないのであれば出展しない。中途半端はダメだ!!」
田中は持論を力強く主張し、頑として10コマを確保することを譲りませんでした。
とにかく”目立つが勝ち!”が社風のOWNDAYS / オンデーズ
そして、下の会場案内図のとおり、オンデーズは10コマで島(アイランド=4方向を通路に囲まれる)を丸々使い、かつ出入口の真正面という絶好のポジションをゲットしたのでした。
オンデーズの他に「島(10コマ)」を使っている企業なんて、ダスキンくらいしかありません。
▼「オンデーズ」を探せ!!
さらに展示会当日は、OWNDAYSはキャンペーンガールも用意して開場の入り口を入ってすぐの場所でバックを配布。
大型ディスプレイやレンズ加工の実演等のイベントも行い、FCショーに出展する多くのブースの中でもかなり目立っていました。
▼「目立つが勝ち!」のOWNDAYS
錯覚して猛烈アプローチしてきたベンチャーキャピタルA社
派手な出展ブースで目立ったOWNDAYSは、傍(はた)から見れば、とても勢いがある会社と錯覚するのでしょう。
そもそもFCショーへの来場者の方々に錯覚してもらうのが狙いではあります。
ただし、FCショーに出展する目的は、フランチャイズの加盟を希望する方々にOWNDAYSを知って関心をお持ちいただくことです。
ところが同時に、「お呼びではない営業マン」に対しても錯覚を起こさせてしまい、要らぬアプローチを受けることになってしまったのです。
投資先を探しにFCショーへ来場するVC(ベンチャーキャピタル)A社の営業マンB氏も、そんな「招かざるもの」の一人でした。
VCのA社の営業マンであるB氏は、社長の田中修治に対して盛んに営業攻勢をかけ、
「ぜひ資金支援の提案をさせてください!!」
と猛烈にアピールしたのでした。
田中は、B氏のあまりのしつこい営業に折れて、FCショーの後日に、A社のB氏の上司と面談することになりました。
A社の営業マンと上司が来社・・・予想外の展開に!?
そしてある日、南池袋にあったオンデーズの本社へ、ベンチャーキャピタルA社のB氏が上司と一緒に来社しました。
当時のOWNDAYSの本社はまだ、パッとしない雑居ビルにあった狭いオフィスです。
薄いパーテーションで仕切られた狭い応接スペースで、田中修治と私の二人でA社の応対をしました。
初対面の挨拶を終えた後に、A社のB氏がまず言ったこと・・・
「実は私は異動になりました・・・」
「えっ・・・?」
私は何となく嫌な予感がしました。隣り席の田中も同じ様なことを感じたのでしょう。
しばらく沈黙が続きました。
すると突然、A社のB氏の上司が、ふんぞり返ってあからさまに上から目線で、質問してきました。
「何だか、おたくが融資を受けたいと言っているということですが・・・」
私は誇張していませんよ。本当に唐突に、訳が分からない話の切り出し方でした。
(へっ!?)
そのB氏の上司の失礼極まりない態度と言葉に、田中も私もいきなり沸騰してしまいました。
「あれ? 何ですか!? こちらが何かをお願いするという話になっているのですか!?」
私がB氏に顔を向けてムッとした表情で尋ねると、B氏は慌てふためいた感じとなりました。
何か言い訳をしていたような気もします。しかし、もはやハッキリとは覚えていません。
とりあえず「準備しておいてほしい」と言われた決算書をA社に渡しました。
オンデーズの決算書にざっと目を通して、出てきた言葉は結局「今の状況だと難しいですね」というB氏の上司の”感想”だけでした。
自分の異動が決まったら、もう関係ないの!?
「残念ですが」とか「申し訳ない」とかそんな様子は微塵もありません。
「今の状況」とか言ってはいるものの、異動が決まったB氏は、自分の後任についての話すらしません。
もう異動が決まったので「このままフェードアウトしたい」という態度が見え見えです。
(そんな結論になることは最初から分かっていて、だから『会っても無駄だ』と言っていたのに)
その後、私がアプローチしてくるVCやファンドに対して極端に冷たくなったのは、この件がきっかけでもあります。
OWNDAYSの店舗拡大の勢いを見て”すり寄ってきた”C社
2つ目の事例は「国内100店舗を超えて続伸し、海外進出も始まった」OWNDAYSの勢いを見てアプローチしてきた、ベンチャーキャピタル(VC)大手C社の話です。
門前払いする奥野を避けて社長に直接アプローチしてきた
C社のD氏は、まずは私に何度も電話で営業をかけてきました。
私はこの手の営業電話はハッキリとお断りするタイプなので、恐らくD氏にとっては「けんもほろろ」といった印象だったでしょう。
すると、D氏は社長の田中修治へ直接アプローチを始めました。そして、やがてはD氏の思惑通り、
「奥野さん、C社がしつこくてうるさいから、決算書を渡してあげてよ・・・」
といった展開になったのです。
「いやあ、無理だと思いますよ」
と言いながら、私はとりあえず用意した資料ファイル(稟議パッケージ)をC社のD氏へ渡したのでした。
VC営業マンの”人間性を疑う”酷い捨て台詞
ベンチャーキャピタルC社のD氏に資料を渡してから数週間の後、案の定「投融資は不可」の回答がありました。
謝絶の回答自体は想定どおりです。ただし、NGを告げる際にD氏が言い放った言葉があまりにも酷いのです。
「いやあ。こんなに利益が低いとは思っていなかったです・・・」
なんじゃい!! その言い草は!?
(だから最初っから無理だと言っていたじゃないですか! 『いやいや、うちは銀行とは違うから大丈夫』とか見得を切っておいて、その言い方はないでしょ!)
と、あやうく私はその場でC社のD氏を怒鳴りつけるところでした。
しかしもう、こういう輩(やから)をまともに相手しているだけ時間と精力の無駄です。とっととお帰りいただきました。
営業マンの人間性は会社および業界のイメージに影響する
私も、ベンチャーキャピタリストが全てダメとは思っていません。当然ながら素晴らしい方々もおられましょう。
しかし企業側の担当にとって、投資家と接触する機会などは限定的です。
その限られた数回の機会に、ことごとく後味の悪い対応を受けてしまうと、もう印象としては最悪ですね。
前述した”A社のB氏とその上司”および”C社のD氏”に対しては、数年前に某銀行のロビーで私が担当者にぶつけたものと同じ言葉を贈りたいです。
「中小企業を舐めんじゃね-よ!!」