携帯電話抑止装置(ジャマー)を導入する劇場やコンサートホールが増えています。演奏中でも ケータイやスマホの電源をオフにする必要がないのです。他人の無作法にイラついたり、電源の消し忘れを確認したり、余計な神経を使わずに鑑賞できるのは良いですね。(文中敬称略)
演奏中でも携帯電話の電源を切る必要がない?
NHKホールでのコンサートを聴きに行ったところ「携帯電話の電源をお切り下さい」という、映画館や劇場でおなじみのアナウンスがありませんでした。
そして不思議な現象に「あれっ?」と思ったのです。
NHKホールの公演でスマホのライト機能ONのお願い?
2018年4月、アメリカ出身のJ-POP歌手クリス・ハートが引退する最終公演を聴くため、私はNHKホールへ行きました。
すると会場の入り口で、係の人から「必ずお読み下さい!!!」と書かれたペーパーを手渡されました。
ペーパーの内容は、コンサートスタッフからの『お客様へのお願い』です。
▼NHKホールのクリス・ハート公演でのお願いペーパー
コンサートスタッフからの「お願い」に書いてあった内容は次のとおりでした。
「●●●(の曲)が始まりましたら、スマートフォンのライト機能をONにして点灯させて、ステージに向かって、楽曲合わせて左右に優しく振ってください」
このお願い内容を見て、私は「???」となりました。
会場内でスマホを確認すると全て「圏外」になっていた
「あれ? スマホのライト機能をONにして使ってくれということは、スマホの電源もONのままで良いということ?」
これまで劇場や映画館で「携帯電話の電源をお切りください」と訴える、うるさいほどの場内アナウンスに慣れていた自分は、習性から全てのデバイスの電源を切ってしまいます。
そこでスマホの画面を見たところ「圏外」表示。スマホを複数台(別キャリア)持っているため、念のため他の機種も確認してみたところ、見事に全部「圏外」になっていました。
ちなみにロビーに出ると「圏外」ではなく、アンテナが立ちます。
10年以上前から携帯電話抑止装置を設置するホールが拡大中
NHKホールでの現象を不思議に思った私は、帰宅してから調べてみました。
そして「ジャミング」という言葉を知りました。ジャマーという携帯電話抑止装置で通信妨害をしているのです。
携帯電話抑止装置(ジャマー)とは
「これは何かしら”圏外”にしてしまう装置があるのかも」と思い、調べてみたところ、携帯電話抑止装置を設置してジャミング(通信妨害)を行っていることを知りました。
装置の仕組みを簡単に言うと「携帯電話の基地局と同じ電波を出して、基地局に”なりすまして”携帯電話を使えなくする」というものです。
「携帯電話抑止装置は携帯電話の基地局と同じ周波数の電波を基地局よりも強く出すことで,そのエリア内の携帯電話が基地局と通信できないようにするんです」と答えてくれた。携帯電話抑止装置1台で直径約100メートルの圏内をカバーできるという。
下のリンク先記事には、ジャマー装置の実際の写真や詳しい仕組みが説明されています。
NHKホールの装置導入は2007年(平成19年)
前述の記事の内容から逆算したところ、2005年前後から劇場で携帯電話抑止装置の導入が相次いでいるとのことです。
この数年,帝国劇場,国立劇場,東京宝塚劇場,NHKホールなどの劇場やコンサート・ホールが相次いで携帯電話抑止装置を導入しているという。
日経XTECH ー NETWORK調査隊 インフラ編 2007/01/12 より引用
携帯電話抑止装置の設置には総務大臣の免許が必要
携帯電話抑止装置を使用するには総務大臣の免許が必要です。(電波法第4条)
電波法では、無線局を開設する場合には、微弱な電波を発射する無線機等を除き、総務大臣の免許を受けなければなりません(電波法第4条)。
総務省ウェブサイト – 携帯電話等の通信抑止装置(ジャマー等)について より引用
テレ・ポーズという携帯電話抑止装置(ジャマー)を販売しているメーカーのウェブサイトによると、総務省で設置が許認可されている場所は次のとおり。
- 劇場・コンサートホール
- 医療施設内(ICU・CCU・検査室)
- データーセンター
- 銀行ATMコーナー
- 試験場(教室)
テレ・ポーズのウェブサイトには、携帯電話抑止装置が導入されている施設の一覧も掲載されています。
電波法をクリア(免許不要)な通信抑止装置はない
総務省ウェブサイトでは「あたかも免許は不要であるかのように宣伝販売されている(携帯電話)通信抑止装置(=ジャマー)」に注意を促しています。
そもそもジャマーが微弱な電波なことはあり得ないと説明しています。
これら通信抑止装置は「ジャマー」等と称され、一部では「電波法準拠の商品です」、「電波は微弱ですので電波法等の問題はありません」、「電波法適用外の製品です」など、発射する電波が弱く、あたかも免許は不要であるかのように宣伝され販売されていますが、当該装置は携帯電話等の基地局からの電波を、通信抑止装置から発射する電波でもって抑止する機能であるため、微弱な電波ではシステム的に困難です。
総務省ウェブサイト – 携帯電話等の通信抑止装置(ジャマー等)について より引用
着信は防げるものの「音」対策には万能じゃない?
こういう装置の導入が進めば、携帯電話やスマホの電源の切り忘れにヒヤヒヤ気を奪われることもなく、鑑賞に集中できて良いですね。
でも、アラームや時報が鳴るのは防げないでしょうから、デバイスの電源を切ることマナーを徹底するのに越したことはないなーとも思います。