「毎月1日は映画料金が安い日!」は多くの人が認識しています。しかし、この「ファーストデイ」割引サービスと、料金が1000円になる「12月1日の映画の日」とを混同している人も多いようです。
しかし2つは別物です。料金も違います。そこで実際に主要シネコン(シネマコンプレックス)の「1日」サービスの状況を調べてまとめてみました。
合わせて「日本における映画産業発祥」の記念日が「映画の日」となった背景も説明します。(文中敬称略)
ファーストデイ(毎月1日)は本来の「映画の日」ではない
いまやほとんどの映画館で行われていると思われる「毎月1日」の料金割引サービス。
この1日を「映画の日」と呼ぶ人も多いですが、厳密に言うと間違っている場合が多いのです。
本来の「映画の日」は年に1回の「12月1日」のみです。
シネマコンプレックス大手のウェブサイトを調べてまとめた
実際に映画館の案内をよく見てみると「映画の日」と表示しているサービスデーは「12月1日」だけ。その他の月「初日」の割引デーには別の名前をつけています。
そこで、シネマコンプレックス大手6社の「毎月1日」または「12月1日」の料金サービスの状況を調べてまとめてみました。
▼シネマコンプレックス大手6社の割引情報(各社ウェブサイトから、金額は税込)
映画館 | 毎月1日 | 12月1日 |
イオンシネマ | ハッピーファースト 1,100円 | 映画の日 1,000円 |
TOHOシネマズ | ファーストデイ 1,200円(注1) | 映画の日 1,000円 |
ユナイテッド・シネマ シネプレックス | ファーストデイ 1,200円(注2) | 映画の日 1,000円 |
MOVIX | ファーストデイ 1,200円(注1) | 映画の日 1,000円 |
109シネマズ | ファーストデイ 1,200円(注1) | 表示なし |
T・ジョイ | ファーストデイ 1,200円(注1) | 映画の日 1,000円 |
(注1)2019年6月1日 料金改定 1,100円→1,200円
(注2)2019年7月19日 料金改定 1,100円→1,200円
ご覧のとおり、「毎月1日」の割引サービスについては、イオンシネマだけ名称と料金が他社と違っています。
12月1日を「映画の日」と呼んで料金を1,000円にしているのは各社で共通しています。(109シネマズのみ「映画の日」表記を確認できず)
各館共通していた「毎月1日」の値段に動きあり
イオンシネマ以外のシネコンの「ファーストデイ」料金は1,200円となっています(2021年4月27日現在)。
たまにしか映画館に行かない人は「あれ?」と思うかもしれません。2019年6月~7月にかけて1,100円から100円の値上げが行われて1,200円となったのです。
料金改定を公表した時期で見れば、TOHOシネマズが2019年3月18日に発表して先陣を切りました。
TOHOシネマズ ウェブサイト より引用
すると2019年5月に各シネコンが次々と料金引上げを公表。TOHOシネマズの「ファーストデイ料金の値上げ」発表から2ヶ月遅れて追随した形となりました。
なお、イオンシネマだけが値上げをせずに従来料金のままとなっています。
シネコン大手各社の料金改定のお知らせ(公表日順)
T・ジョイ ウェブサイトより引用
109シネマズ ウェブサイト より引用
(MOVIX)松竹マルチプレックスシアターズ ウェブサイトより引用
ユナイテッド・シネマ ウェブサイト より引用
「映画の日」は日本における”映画産業発祥”の記念日
ではそもそも「12月1日」の『映画の日』とは何なのでしょう?
一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)が”日本の映画産業発祥を記念”して制定した記念日です。
日本における映画産業発祥というのは「日本で初めての有料公開」を指しています。
なぜ「映画の日」は12月1日なのか?
映団連がWebサイトで説明する「映画の日」を「12月1日」とした理由は次のとおり。
・1896年(明治29年)11月25日~12月1日、エジソンが発明したキネトスコープ※が、初めて神戸で輸入上映された。※アメリカの発明王トーマス・エジソン(Thomas Alva Edison)が発明した映画上映装置
・60年目にあたる1956年(昭和31年)より12月1日を「映画の日」と制定した。
1896年(明治29年)11月25日~12月1日、エジソンが発明したキネトスコープが、初めて神戸で輸入上映され、この年から数えて60年目にあたる1956年(昭和31年)より、“12月1日は「映画の日」”と制定し、日本における映画産業発祥(日本で初めての有料公開)を記念する日としました。
一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)ウェブサイトより引用
「映画の日」式典で映画功労者を表彰
映団連では、毎年12月1日(映画の日)に式典を開催して映画産業の功労者を表彰しています。
一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)では、「映画の日」の事業として、
…(中略)…
また、映画産業の活性化及び振興を図るために、「映画の日」中央式典を盛大に挙行し、映画業界で永年にわたり勤続されてきた方々及び映画産業の伸張に功績のあった方々を表彰しております。
一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)ウェブサイトより引用
料金割引サービスは2つの連合会の協力
ところで、毎年12月1日に各映画館で「映画の日 / 料金1,000円」の一律サービスが行われている背景には、映画上映に関わる2つの団体の協力体制があります。
・一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)→映画産業の振興を目的とする社団法人
・全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)→全国47都道府県の興行組合の全国組織
全国興行生活衛生同業組合連合会ウェブサイトより引用
映団連が制定した「映画の日」には(興行側の団体である)全興連が協力して、料金割引やイベントを行っている形です。
一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)では、「映画の日」の事業として、全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)及び傘下の各興行組合のご協力のもとに、入場料金割引、特別招待の実施、地域に即した関連行事の開催等により、全国の映画ファン及び一般の消費者の皆様に向け、一層のサービス向上に努めるとともに、映画を劇場で観ることの魅力を周知することに努めております。
一般社団法人映画産業団体連合会(映団連)ウェブサイトより引用
全興連の事業計画にも次のように明記されています。
12.「映画サービスデー」を行い「映画の日」記念行事には全面的に参加、協力する。
12月1日以外のサービスデーは各都道府県の支部が自由に決定
なお1997年から、「12月1日の映画の日」以外のサービスデーは各都道府県の支部が自由に決定できるようになりました。
そして現在ほとんどの映画館で行われいる「毎月1日」の割引サービスが普及するようになったのです。
映画の日の由来「キネトスコープ」とは何か?
余談にはなりますが、「映画の日」の由来となった、日本初、神戸で上映された「キネトスコープ(Kinetoscope)」とはどういうモノか気になりませんか?
私は猛烈に知りたくなってしょうがなかったので、深堀りして調べてみました。
エジソンが発明した映画上映装置”キネトスコープ”は立ったまま観る では、貴重な当時の写真とともに紹介します。
ちょっとネタばらしをすると、キネトスコープは1台を1人で使う装置。
一度に大勢の人が映画を観ることができるようになるのは、映像をスクリーンに投影する「シネマトグラフ(cinématographe)」の登場を待ちます。
リュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」については リュミエール兄弟の「シネマトグラフ」が映画スクリーン上映の始まり に書きました。